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高カリウム血症対策としてのカリウム吸着薬の意義は?

登録日: 2024.02.07 最終更新日: 2025.11.12

杉本俊郎 (滋賀医科大学総合内科学講座教授) 今井直彦 (聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院腎臓・高血圧内科准教授)

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近年,うっ血性心不全やCKDにおいてRAS阻害薬を中止せずに使用し続けることが予後の改善に重要であると報告されています。また,高カリウム血症を理由としてRAS阻害薬を減量あるいは中止してしまうことが患者の予後を悪化させることも報告されています。さらに,RAS阻害薬の用量についても,最大用量の使用が重要であることが,ことさら強調されています。新規のカリウム吸着薬の使用により,高カリウム血症を理由にRAS阻害薬を減量あるいは中止することなく,使用し続けられる可能性があります。

他にも,糖尿病関連腎臓病(diabetic kidney dis-ease:DKD)においては新規のミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)であるフィネレノンがDKD患者の生命予後や腎予後を変える可能性が報告されています。MRAは従来RAS阻害薬と併用すると高カリウム血症を起こしやすく,特にCKD患者においてはその使用が難しい薬剤のひとつでした。新規のMRAは従来のMRAと比較して高カリウム血症を起こしにくいとはされているものの,必要に応じて新規のカリウム吸着薬を使用することでDKD患者において安全にRAS阻害薬との併用を行うことができるようになる可能性があると考えます。

最近,カリウムに富む植物由来の食事の重要性がCKD患者において注目を浴びています。従来,CKD患者と言えば「カリウム制限,カリウム制限」とお経のように言われていましたが,むしろカリウムに富む植物由来の食事が腎予後の改善に重要である可能性や,そもそも植物由来の食事では高カリウム血症になりにくいことなどが報告されています。そうは言うものの,CKD患者は食事による高カリウム血症のリスクが高いことには変わりはありません。その中で,新規のカリウム吸着薬を使うことで,従来,植物由来の食事を制限されていた患者への食事制限を緩和できる可能性を秘めています。

新規のカリウム吸着薬の評価は固まってはいないものの,従来のカリウム吸着薬に加えて選択肢が増えたことにより,患者個々に合わせて使い分けをすることで,生命予後や腎予後を改善させることが求められています。

【回答者】

今井直彦 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院腎臓・高血圧内科准教授


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