酸素投与が必要であったり,合併症があったりする(あるいはその可能性が十分考えられる)場合は,まずは入院管理が望ましい。
基本的なICU入院後の管理は,急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)の治療に似ているが,ARDSと違い早期回復が期待できる。
▶病歴聴取のポイント
・溺水発生の現場の状況を確認(浴槽?自然水域?外傷の有無は?薬毒物摂取の可能性は?)
・救助の状況〔発見時,心肺機能停止(cardiopulmonary arrest:CPA)だったのか等,救助活動の内容〕
・溺水に至る原因として,他の内因性疾患の可能性はないかどうか(溺水発生前の患者の状況を目撃している人がいれば,状況を聴取)
▶バイタルサイン・身体診察のポイント
【バイタル】
救出直後,CPAであれば心肺蘇生法を行う。
SpO2,呼吸回数,血圧をモニタリングする。
【身体診察】
呼吸様式,呼吸音,Glasgow Coma Scale(GCS)の評価を行う。
▶緊急時の処置
【パターン1】
CPA状態:心肺蘇生法を行う。
【パターン2】
反応がなく(意識障害があり),自発呼吸はないが,脈は触知できる状態:早急に気管挿管を行い人工呼吸器管理とする。人工呼吸器にのせる前に数回の補助換気で自発呼吸がみられてくる場合は,パターン3へ。
【パターン3】
反応はあるが,呼吸状態が悪い(SpO2低下や,呼吸努力を要する)状態:高流量の酸素投与ないし気管挿管の上,人工呼吸器管理とする。もしショックバイタルや血圧が低い場合は,まず輸液投与を行い,循環が保てなければ昇圧薬の使用も検討する。
【パターン4】
反応あり,呼吸様式も循環も破綻していない状態:SpO2低下がみられるようであれば,低流量酸素投与。SpO2低下がなければ,さしあたり酸素投与は必要ないが,経過観察が必要である。
【ERでの対応のポイント】
ABC(気道-呼吸-循環)が安定化できたら,胃管を挿入する(溺水の合併症として誤嚥が多い)。
患者の保温(低体温であれば復温)を忘れないようにする。