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重症熱性血小板減少症候群(SFTS)[私の治療]

登録日: 2023.06.02 最終更新日: 2025.09.20

栗原慎太郎 (長崎大学病院安全管理部教授) 泉川公一 (長崎大学病院感染制御教育センターセンター長)

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重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome:SFTS)は,ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類されるSFTSウイルスを原因ウイルスとし,マダニ媒介性ウイルス出血熱に分類される。地域的な分布では東アジアに多く,日本では西日本に症例が集中している。重症例は50歳以上に多く,疫学的な特徴に偏りが認められる。発熱,倦怠感,頭痛などで発症し,続いて消化器症状が認められることが多い。合併症として,意識障害,腎障害,呼吸器障害,心筋障害,ショック,血球貪食症候群,播種性血管内凝固症候群などが認められることがあり,これらの合併症に対する治療が基本となる。

▶診断のポイント

【臨床経過】

潜伏期間は6~14日である。発熱,倦怠感などの非特異的な症状で発症し,その後の典型的な経過としては,1~7日の発熱期に続いて,8~13日の臓器不全期,14日以降で回復期となる。当然,臨床像により経過は個々で異なるが,治療に際して把握しておいたほうがよい。

【病歴】

マダニ刺咬歴が重要であり,農業・林業等の職業などから野外活動歴を聴取する必要がある。また,イヌやネコなどのペットからの感染も報告されており,患者や遺体からの接触感染も認められることから,病歴の注意深い聴取が重要である。しかし,他院などで既に経過をみている場合も多く,来院時に意識障害を合併している場合があり,家族への聞き取りも併せて行う必要がある。

【検査所見】

疾患名にも入っている通り,検査所見は重要である。白血球減少,血小板減少を認めるが,赤血球減少は認めず,トランスアミナーゼが高値で,CRPは正常範囲内か軽度上昇にとどまり,顕微鏡的血尿を示すことが典型的である。

【身体所見】

特徴的な所見は,マダニ刺咬痕である。しかし,痂皮を形成しないことも多く,認められることはむしろ少ない。刺咬部の所属リンパ節で腫大を認めることもあるため,注意が必要である。肝脾腫は稀とされている。


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