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急性出血性直腸潰瘍[私の治療]

登録日: 2023.04.07 最終更新日: 2025.09.20

猿田雅之 (東京慈恵会医科大学内科学講座消化器・肝臓内科主任教授)

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急性出血性直腸潰瘍(acute hemorrhagic rectal ulcer:AHRU)は,①重篤な基礎疾患(特に脳血管障害に多い)を有する,②高齢者に多い,③突然で無痛性の大量新鮮血便にて発症する,④歯状線に接するがその近傍の下部直腸に限局して発生し,不整形,地図状ないし帯状の潰瘍が形成される,⑤止血がなされれば比較的良好に治癒軽快する,といった特徴的な臨床所見を有する疾患1)である。動脈硬化の要因を背景に,下部直腸の血流低下の予備段階にある高齢者が,何らかの理由で寝たきり状態になることで,さらなる粘膜血流の減少をきたし惹起される急性虚血性の粘膜障害である2)

▶診断のポイント

重篤な基礎疾患を有する寝たきりの高齢者に,突然の無痛性の大量新鮮血便を認めた場合には,まずはAHRUを積極的に疑い,大腸内視鏡検査や硬性直達肛門鏡検査を実施する。内視鏡検査では,歯状線に接するか,あるいはその直上の下部直腸に,1/3~全周性の単発ないし多発する潰瘍を認め,さらに潰瘍部には出血源となる露出血管が存在し,噴出性あるいは湧出性の動脈性出血を認める。


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