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カンボジア人医師への「教育」(林 祥史)[プラタナス]

登録日: 2022.07.09 最終更新日: 2025.09.22

林 祥史 (北原国際病院院長/サンライズジャパン病院プノンペン顧問)

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“Doctor, I think this would be Cryptococcus meningitis.”

セン先生は落ち着いた口調で、私の目を見つめながら静かに言った。

“I can check india ink staining of the spinal fluid.”

2017年1月、サンライズジャパン病院が開院して3カ月が経っていた。当院は日本の高品質な医療を提供するためにカンボジアに設立された民間病院である。日本人医療者が総勢29名現地に赴任し、カンボジア人を教育しながら臨床を行うという一大プロジェクトであるが、私は院長として赴任していた。

ある日一人の患者が転院してきた。32歳男性、5日前から発熱に対して抗菌薬を投与されたが改善せず、意識障害が出現したため当院へ転院となった。
採血や画像検査では感染巣は見当たらなかった。髄液検査を行うと細胞数450と高値、単核球優位であった。現地に多い結核性髄膜炎かと考え、髄液の結核PCR検査を行うも陰性。細菌性髄膜炎は否定できず新たな抗菌薬を投与しつつ、検査偽陰性の可能性を考えて抗結核薬を開始した。

しかしながら5日経っても解熱せず、髄液検査でも数値は横ばい。私には別の診断が思い浮かばず、頭を抱えていた。そんな中、私と一緒に診療にあたっていたセン先生から冒頭の言葉があった。


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