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MRONJ/BRONJ[私の治療]

登録日: 2022.05.02 最終更新日: 2025.09.22

森川貴迪 (東京歯科大学市川総合病院口腔顎顔面外科学講座講師)

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骨吸収抑制薬(ビスホスホネートやデノスマブ)および血管新生阻害薬に関連する顎骨骨髄炎・顎骨壊死のことをMRONJ(medication-related osteonecrosis of the jaw)/BRONJ(bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw)と称する。歯性感染症などの炎症が加わることで発生することが多く1),わが国では増加している2)

▶診断のポイント

骨吸収抑制薬および血管新生阻害薬による治療歴があり,8週間以上持続して口腔・顎・顔面領域に骨露出か骨壊死を認めること(骨触知を含む)。また,放射線照射歴がないことやがんの骨転移でないことを確認する。

初期のステージ1では口腔粘膜の腫脹や瘻孔,骨露出などが生じる。ステージ2に進行すると,疼痛や排膿,単純X線写真での骨溶解像をきたす。さらにステージ3に進行すると,皮膚からの瘻孔や顎骨の広範な破壊像を呈し,病的骨折をきたす場合もある。著しい腫脹や疼痛,持続的排膿などにより,患者のQOLが大きく低下し,原疾患の治療にも影響を及ぼす。ステージ0は骨露出はないが,歯原性ではない疼痛が生じ,その後,約半数が骨露出を伴うMRONJ/BRONJに進行するとされる。

▶私の治療方針・処方の組み立て方

MRONJ/BRONJの治療は,保存療法と外科療法に大別される。口腔内環境が大きく影響するため,口腔衛生管理を徹底する。

ステージ0,1は保存療法が主体であり,含嗽や局所洗浄などが主体である。骨吸収抑制薬および血管新生阻害薬の処方医と相談し,原因薬の中止や変更についても検討する。

ステージ2,3は保存療法に加え,外科療法を考慮する。症状により抗菌薬投与や鎮痛薬を用いる。露出骨からの分離菌はペニシリン系抗菌薬に感受性を示す。また,ペニシリンアレルギーの場合には,マクロライド系抗菌薬やリンコマイシン系抗菌薬などが有効とされている。第三世代セフェム系抗菌薬はバイオアベイラビリティが低く,組織移行性も低いため,エンピリックに漫然と用いるべきではない。ハイリスクで強度の加療が必要になる場合を除き,耐性菌の蔓延を防ぐため,抗菌力が強く,広域スペクトラムを持つキノロンやドキシサイクリンなどは第一選択薬としない。細菌培養を行い,デフィニティブ治療へ移行する。

鎮痛の際には,アセトアミノフェンやNSAIDsなどの一般的な鎮痛薬のほか,末梢神経障害をきたした場合にはプレガバリン,カルバマゼピンなど鎮痛補助薬も考慮する。末梢神経障害の改善のために,ビタミンB12製剤や副腎皮質ステロイドなどを用いる。そのほか栄養管理として経腸栄養薬なども考慮する。

また,骨露出部は表面が粗糙で食物残渣や細菌の温床となりやすいため,腐骨除去術や周囲骨の削去,顎骨切除などの外科療法は,骨露出部のバイオフィルムの除去に有効に作用し,抗菌療法が有効になる。


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