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妊娠糖尿病のスクリーニング法と介入法 【妊娠初期・中期に随時血糖値でスクリーニングし,100mg/dL以上の際に75g経口ブドウ糖負荷試験を実施】

登録日: 2016.09.23 最終更新日: 2025.09.20

光田信明 (大阪府立母子保健総合医療センター 産科診療局長(周産期)・主任部長) 杉山 隆 (愛媛大学大学院医学系研究科産科婦人科学教授)

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わが国において妊娠中の糖代謝異常の診断基準は幾多の改訂を経ています。多数を占める妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus:GDM)は診断基準が改訂されて診断例数は増加しましたが,その管理指針は明確ではありません。妊娠期・産褥期に行うべき糖代謝スクリーニング法,医療介入などについて具体的に,愛媛大学・杉山 隆先生のご教示をお願いします。

【質問者】

光田信明 大阪府立母子保健総合医療センター 産科診療局長(周産期)・主任部長



【回答】

GDMの臨床的意義として,以下の3点が挙げられます。すなわち,①妊娠合併症の増加,②母体の将来の2型糖尿病への進展率の増加,③児の将来の生活習慣病の発症率の増加です。

以前のGDMの診断基準のエンドポイントは,②の将来の2型糖尿病発症でしたが,現行の診断基準のエンドポイントは,①の妊娠合併症の増加,特に児の過剰発育に設定されています。その結果,診断基準のカットオフ値が旧診断基準より甘くなり,ご指摘の通り,GDMの頻度が増加したわけです。さらなる問題として,管理指針が定まらぬうちに診断基準が独り歩きしたため,実地臨床の場において混乱をきたし,各施設において様々な管理がなされているのが現状です。

海外でも新診断基準に対する風当たりは強く,新診断基準を提案したInternational Association of the Diabetes and Pregnancy Study Groups(IADPSG)は,2015年秋に「妊娠初期における診断基準は,現時点で妥当性はない」というコメントを出しました。

このような背景下,現時点でGDMのスクリーニングや管理に関する十分な疫学研究やRCTが存在しないために,根拠に基づいたクリアな回答ができないのが実情です。しかしながら,最近のわが国発の多施設および施設内研究による報告や海外の臨床研究を考え併せると,肥満者がハイリスクであること,妊娠初期のGDMに対する治療介入に関するエビデンスがまったく存在しないこと,などから以下のスクリーニング法や介入法が一法であると考えます。


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