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特発性大腿骨頭壊死症[私の治療]

登録日: 2021.10.17 最終更新日: 2025.09.20

山本卓明 (福岡大学医学部整形外科教授)

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虚血により骨・骨髄組織が壊死に陥った状態で,骨梗塞と同義である。本症は,あくまで細菌感染を伴わない,非感染性,無腐性(aseptic)の骨壊死である。一方,ビスホスホネート製剤により発生するとされている顎骨壊死は,細菌感染による腐骨形成を伴った骨壊死であり,本症と基本的病態がまったく異なっている。
発生関連因子はステロイド投与,アルコール多飲がある。年間患者発生数は2000~3000人と推定され,人口10万人当たりの発生率は年間2.51人である。好発年齢は,ステロイド投与対象疾患が若年に好発するため,ステロイド関連では20~30歳代,それ以外では40歳代にピークがある。
両側発生率はステロイド関連で約65%,それ以外では約45%である。ステロイド関連の中で全身性エリテマトーデス(SLE)に限ってみると88%が両側罹患である。また,片側が発症して対側が発症するまでの期間は同時または6カ月以内が最多で,2年を超えるものは稀である。

▶診断のポイント

【症状】
〈発生と発症の違いに注意〉

骨壊死が発生した時点では無症状で,壊死巣が圧潰をきたして初めて症状が発現(発症)する。発生と発症との間に時間的差異があることが特徴である。発症した場合は,急性な股関節痛で始まることが多いが,中には坐骨神経痛様疼痛や,大腿より膝にかけての痛みなどがある。

【検査所見】

単純X線での,骨頭圧潰(crescent sign),帯状硬化像が特徴的で,特に発症早期ではわずかな圧潰所見を見逃さないことが重要である。診断困難時あるいは早期の骨壊死の同定にはMRIが有用で,骨頭内のT1強調像での帯状低信号が特徴的である。

【診断基準】

①単純X線での骨頭圧潰,②単純X線での骨頭内の帯状硬化像,③骨シンチグラフィーでのcold in hot,④MRIのT1での骨頭内帯状低信号,⑤骨生検標本での骨壊死像,の5項目のうち2つ以上を満たすと確定診断できる。ただし,腫瘍および腫瘍類縁疾患,骨端異形成症,大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折は除外する。

【検査所見とその読み方】

単純X線における帯状硬化像,MRIにおける低信号バンド像が壊死巣と健常部との境界に相当する。その所見に基づいて病期,病型を確定させる(表1,2)。


なお,病型に基づいた圧潰率は,type A:0~20%程度,type B:10~50%程度,type C-1:70%程度,type C-2:70%以上,との報告がある。


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