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腰背部痛[私の治療]

登録日: 2021.04.28 最終更新日: 2025.09.20

冨永 聡 (藤田医科大学救急総合内科学) 岩田充永 (藤田医科大学救急総合内科学教授)

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腰背部痛をきたす疾患は多岐にわたり,緊急性の高い疾患が多く含まれる。病歴や身体所見からred flag signを拾い上げ,緊急性の高い腰背部痛を見きわめ,見逃さない。

▶病歴聴取のポイント

非常にcommonな症候であるが重篤な疾患が隠れている恐れがあり,適切な問診でそれらの疾患らしさを拾い上げていく。腰背部痛のうち85%が検査で異常がわからない非特異的腰痛症である1)ため問診が重要である(表1)。

  

体動で増悪する痛みは体性痛が示唆され,多くは筋骨格系由来の痛みである。時に内臓疾患に伴う胸膜・腹膜刺激徴候により痛みが誘発されることがあるため,注意が必要である。安静にしていても改善しない痛みは内臓痛が示唆される。冷汗や嘔気・嘔吐のほか,便意は内臓痛に伴う自律神経症状と考え,重篤な疾患の存在を考える。

▶バイタルサイン・身体診察のポイント

病歴から鑑別疾患を考え,必要に応じて胸部や腹部の診察も行う。身体診察でのred flag signを表2に示す。


バイタルサインの異常を伴う腰背部痛では,内臓疾患や感染性の筋骨格系疾患を念頭に置いて対応する。化膿性椎体炎でも発熱の頻度は35~60%と高くない2)ため,発熱がなくとも感染症を否定してはいけない。

感染性の筋骨格系疾患では多くが血行性の感染のため,疑わしい場合は感染性心内膜炎に伴う筋骨格系合併症ではないかと考え,眼球結膜や四肢末端まで疑いの目をもって診察する。

筋骨格系疾患による腰背部痛と考える場合は,身体診察時に痛みの発生源をピンポイントで示せるよう心がける。画像評価を行っても痛みの部位の詳細な同定ができていなければ見逃す可能性がある。

神経徴候を伴う腰背部痛は重篤な疾患のおそれがある。特に肛門関連の神経学的異常は脊髄病変を示唆する有用な所見である。

大動脈解離では上下肢の片麻痺・下肢の対麻痺が起こりうる。


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