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急性心膜炎[私の治療]

登録日: 2020.07.22 最終更新日: 2025.09.20

絹川真太郎 (九州大学大学院医学研究院循環器病病態治療講座准教授)

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主にウイルス感染による心膜の炎症と,それに伴う諸症状を呈する。心囊液貯留を伴うこともあれば,伴わないこともある。胸痛患者の1~5%が急性心膜炎で,16~65歳の男性で発症頻度が高い。原因は大別すると,感染性と非感染性であるが,前者はウイルス性が多く,後者は自己免疫性が多い。

▶診断のポイント

ESCのガイドライン1)では,主要4項目(①前胸部痛,②心膜摩擦音,③心電図での広範囲でのST上昇やPR低下,④心囊液貯留),のうち2項目以上を満たす場合に急性心膜炎と診断する。胸痛は鋭い痛みであり,坐位や前傾で軽快するのが特徴で,心膜摩擦音は1/3の症例で聴取される。また,心囊液貯留は60%程度の症例で確認される。

副次項目として,①炎症反応高値(CRP,赤血球沈降速度,白血球数),②CTやMRIでの心膜炎症所見を認める。

4~6週間以上3カ月未満の症状が持続する場合を持続性心膜炎,3カ月以上持続する場合を慢性心膜炎,軽快後4~6週間以上経過して再発する場合を再発性心膜炎と定義する。

▶私の治療方針・処方の組み立て方

大部分の急性心膜炎は良好な経過をたどるため,重症化指標(主要リスクファクター:38℃以上の発熱,亜急性経過,多量の心囊液,心タンポナーデ。その他のリスクファクター:心筋炎合併,免疫抑制状態,外傷,抗凝固薬服用中)がない場合は,積極的な原因検索は必要なく,外来での非特異的な抗炎症薬による治療を行う。

激しい運動は心膜炎持続・再発のリスクとなるため,症状改善およびCRP正常化までは,安静中心の生活を指導する。競技スポーツは,症状・所見が改善した後も発症から3カ月間,心筋炎合併例では6カ月間は避け,スポーツ再開時は再評価を行う。

禁忌がない限り,アスピリンあるいは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を標準治療とし,消化性潰瘍予防目的にプロトンポンプ阻害薬を併用する。これらの薬剤は,症状および炎症所見を指標に,2週間以内に減量する。また,体重で調整した低用量のコルヒチンの使用は,心膜炎再発のリスクを低下させることが知られているため標準治療に併用し,3カ月間継続する2)。なお,コルヒチンは必ずしも減量する必要はないが,症状持続や再発予防目的に減量を考慮する。

多くの場合,2週間以内に症状・所見が改善する。1週間程度で症状が改善しない場合には,細菌性や自己免疫性などの原因を考える必要がある。また,特定の心膜炎の原因が明らかとなった場合には,原疾患に対する治療を行う。

アスピリンやNSAIDs禁忌や無効例に対して,次善の治療法として糖質コルチコイドを用いる。糖質コルチコイドは低・中等度用量で用い,症状や炎症所見が改善するまで初期投与量を継続する3)

これらの治療によっても再発する場合の確立した治療法はないが,アザチオプリンや免疫グロブリン投与が行われることがある。


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