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原発性心臓腫瘍(良性)[私の治療]

登録日: 2020.04.08 最終更新日: 2025.09.20

瀬戸達一郎 (信州大学医学部外科学教室心臓血管外科学分野教授)

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原発性心臓腫瘍は稀な疾患であり,0.0017~0.33%と報告されている。良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されるが,そのうちの7~8割が良性腫瘍で心臓粘液腫が最も多く,乳頭状線維弾性腫,横紋筋腫などもみられる。本稿では,代表的な心臓粘液腫と乳頭状線維弾性腫について述べる。

▶診断のポイント

【心臓粘液腫】

心臓粘液腫に罹患した患者に特異的な病態はなく,その臨床症状は多彩である。最近では心臓超音波検査の普及とともに,無症状で偶然発見されることも多い。

①心腔内狭窄症状:心腔内に発生した腫瘍が心腔内を占拠することにより,流出路狭窄をきたす。すなわち,左房の場合は僧帽弁狭窄症,右房の場合は三尖弁狭窄症に類似した症状を呈する。

②constitutional signs:発熱,体重減少,筋肉痛,関節痛,Raynaud症候群といった多彩な症状を呈し,constitutional signsと呼ばれている。

③塞栓症状:心臓粘液腫は左房内発生が多く,左心系の塞栓症が起こりやすい。心房細動の既往のない患者で心原性塞栓症を呈する場合,本疾患を疑う必要がある。

【乳頭状線維弾性腫】

乳頭状線維弾性腫の頻度は原発性心臓腫瘍の7~10%で,心臓粘液腫についで多い。心内膜のどの部位からも発生するが,95%以上が左心系に発生し,77%が弁より発生している。腫瘍表面のフィブリン血栓や腫瘍組織が塞栓源となり,塞栓症を併発する。一過性脳虚血発作,狭心症,失神,肺塞栓,腸管虚血,下肢虚血などがみられる。


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