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ラダック天空紀行(その2)─なんでもジュレー[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(216)]

登録日: 2018.08.29 最終更新日: 2025.09.20

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

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ラダックはチベット仏教徒が多く、言葉もチベット語に似ている。チベット文字で綴られるが、発音はずいぶんと違っていて、チベット語との会話はできないそうだ。

もちろんラダック語はまったくわからない。が、ラダック語には信じられないくらい便利な言葉がある。それは「ジュレー」だ。ローマ字だと、julayとか綴ってある。

「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」「ありがとう」「どういたしまして」「さよなら」「おやすみなさい」、全部ジュレーで済んでしまう。ついでに「いただきます」も「ごちそうさま」もジュレーにしておいた。よう知らんけど、まぁええやろ。

旅人にとってこれほどありがたい言葉はない。挨拶やお礼を口にしたくても、状況によって違う言葉を使う必要があると思うと、どうしても躊躇してしまう。それが、ひとつの言葉でなんでもオッケーなのだ。

トレッキングの途中で民泊をした。その家族にも気軽にジュレーだ。1日に何回か顔をあわしても、そのたびにジュレーと言っておけばいいのだからありがたい。意思疎通できているわけではないけれど、なんとなく仲良くなれたような気がしてくる。

日本語でいうと「どうも」が近いかもしれないが、どうもはどうも軽々しすぎるような気がする。ジュレーに対応するようないい言葉があったら、気分的にもっとええ感じで外国人旅行者を迎えられると思うんですけど、なんかありませんかねぇ。

もうひとつ覚えた言葉があって、それは「オム マニ パドメ フム」である。これは言葉というよりは呪文、観音様へのお祈りの真言、マントラだ。

マントラ自体の意味はよくわからんのだが、健康、幸せ、繁栄などを願いながら唱える。お経が中に仕込んであって、回せばお経をあげたのと同じ功徳があるというマニ車は、寺院だけでなく、町中いたるところにある。これもマントラを唱えながら回す。

ドライバーさんが敬虔な仏教徒だったので、歌になっているマントラがカーステレオからエンドレスで流れていた。なかなか爽やかな節回しで気持ちいいものだった。

マントラが書かれた小さな携帯式のマニ車(写真)を買ってきて、このところマントラを唱えながら回している。功徳があるかどうかはわからないが、不思議と気持ちが落ち着いてきてなかなかええもんです。

なかののつぶやき

「お土産物屋さんで買ったマニ車。直径が5cmほどの小さなものです。
下にある木の部分を握って、マニ車についている錘の遠心力を利用して回します。方向は必ず時計回り」


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