2025年9月17〜21日の日程で、ポルトガル・リスボンにおいて世界家庭医療学会(WONCA)の世界大会が開催された。現在、WONCAは世界111カ国・133の団体から構成されており、会長はオーストラリアのKaren Flegg医師が務めている。私が理事長を務める日本プライマリ・ケア連合学会は、日本を代表する加盟学会として毎回代表団を送り出しており、今回は私と副理事長の井上真智子先生が代表として会議に参加した。
日本はこれまで、WONCAのアジア太平洋地域学術大会を2005年と2019年の2回にわたり開催し、いずれも成功裏に終えることができている。今回、学会発足(2010年)からおよそ20年となる2029年の世界大会を日本に誘致すべく、リスボンの会議に臨んだ。対抗馬としてタイ・バンコクが名乗りを上げており、手強い相手であったが、プレゼンを経て行われた投票の結果、日本が開催国として選出された。
日本が選ばれた理由はいくつかあるが、ウクライナ戦争やガザの紛争など、世界が分断と混乱に苦しむ状況で、この学会がそれを乗り越えるための「世界の団結の場」になることをめざすというコンセプト、そして、日本が直面する最先端の高齢化に対応する医療システムの重要性や、災害医療においてプライマリ・ケアが果たしうる役割をわかりやすく提示できたことが大きな要因だった。
それだけでなく、会場で各国の代表と対話を重ねる中で感じたことは、日本が戦後、地道に積み上げてきた国としての信頼であった。スリランカの代表からは道路や橋などインフラ整備にはたしてきた日本の貢献、ケニアの代表からはJICAが建設した病院が住民の健康維持に役立っていることについて、それぞれ心から感謝の言葉を頂いた。「私たちはそうした日本を訪れることを楽しみにしています」と。1人の日本人として大変誇らしく、また、先人達がはたしてきた仕事に対する感謝の思いがつのった。
2029年6月13〜17日の日程で、京都国際会議場を舞台にWONCAの世界大会が開催される。リスボンでの参加者は約4500名だったが、京都では8000名規模の参加者を目標に、企画の充実と宣伝を力強く展開していこうと思っている。どうか日本の皆様にもたくさん参加して頂き、世界の家庭医との交流を楽しんで頂きたいと思う。
草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]