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【識者の眼】「病院経営を考える③:総合的質経営の導入」飯田修平

登録日: 2025.09.29 最終更新日: 2025.09.25

飯田修平 (〔公財〕東京都医療保健協会医療の質向上研究所研究員、練馬総合病院質管理部部長・名誉院長)

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本稿では、情報・質・安全を軸に病院経営について検討する。なぜならば、全分野において経営とは、情報技術に基づく情報システムの構築、情報の利活用、質向上、安全確保、信頼性向上、結果として経営への貢献(顧客満足・財務的成果)の全段階の実践だからである。

金儲けは怪しからんという人が多い。営利・非営利の意味を理解して頂きたい。霞を食べてはやっていけない。財務的成果(利益)は目的ではないが、組織継続の必須条件(手段)である。経営資源、すなわち、モノ、人、金、時間、情報の確保が必須である。経営資源の中でも、金は重要な要素である。それは、ほかの経営資源と等価交換しやすいからである。

経営とは、専門知識・技術に基づいて、経営資源を活用した実践である。質向上とは、単に、提供する製品・サービスの質に限定せず、職員の質・経営の質(総合的質)までを含む。総合的質経営(Total Quality Management:TQM)がめざすものである。

財務の質向上、また、安全確保をめざす場合には、遠回りと思う人が多い。しかし、利益・利益と叫んでいても利益を確保することはできない。安全・安全と叫んでいても安全を確保することはできない。冒頭で述べたように、順番・段取りがあり、急がば回れという格言もある。

組織ごとに設定した目的、規律、構成員、手段・方法があり、組織管理の考え方・方法が、品質管理(Quality Management:QM)である。品質管理では、原理・原則に基づいて、現場で現実に現物で実践すること(三現主義)、すなわち、五ゲン主義が基本である。

品質管理は、必ずしも、物に限定せず、あらゆる分野の製品・サービスを対象とする。「品」が気に入らなければ、「質管理」と言い換えてもよい。

品質管理は、一般産業界で開発された考え方・手法で、医学・医療・病院経営には適用することはできないという人が多い。しかし、組織運営の観点では、まったく変わりはなく、適用することができる。

筆者は、三十有余年、品質管理を研究し、実践している。最初から自主的・積極的に意図したのではない。生涯一臨床医の予定であった。しかし、青天の霹靂といえる状況で、病院管理者を拝命した。何の準備もなかったので、有名病院の院長である先輩諸氏を訪問し、教えを乞うた。しかし、部分的には参考になるが、全体としては自分で考えるしかないということに気づいた。医療界以外の産業界の経営者に関する文章を読み、話を聞いた。そこで、品質管理に遭遇した。

なぜ、TQMをするのかと、問われる。TQMの考え方は、筆者の外科医・臨床医としての経験・考え方と合致するからである。真剣に考え、実践すると同じ結論に行きつくことを実感した。違和感なく、考え方を変える必要もなく、当然のごとく、品質管理(QM・TQM)を導入した。そして、2025年、これまでの経緯を『TQMの医療への展開』(経営書院)として報告した。

飯田修平(〔公財〕東京都医療保健協会医療の質向上研究所研究員、練馬総合病院質管理部部長・名誉院長)[病院経営総合的質経営

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