2040年を見据えた地域医療構想のあり方について議論する「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」が2025年7月に開催され、「新たな地域医療構想策定ガイドライン」の策定に向けた議論が行われている。2025年秋頃に中間とりまとめを行い、2025年度中にガイドラインが発出される予定だ。これを受けて、各都道府県は2026年度中に新地域医療構想を策定し、2027年度から実施が予定されている。
新地域医療構想は、以下の3点において現行の地域医療構想と異なる。
1つ目は、対象範囲が入院医療だけでなく、外来医療・在宅医療、介護連携等にまで拡大されたことである。2つ目は、従来の病床機能分類(高度急性期機能、急性期機能、回復期機能、慢性期機能)のうち、回復期機能を「包括期機能」と改める方向が示されたことである。3つ目は、医療機関ごとの役割を地域の中で明確化・分化し、連携・再編・集約化を推進することができるよう医療機関機能(高齢者救急・地域急性期機能、在宅医療等連携機能、急性期拠点機能、専門等機能)を新たに設けたことである。
また、新地域医療構想では、大まかな人口規模に基づいて区域を「大都市型」「地方都市型」「人口の少ない地域」の3つに分類している。いずれの区域でも生産年齢人口は減少するとされているが、高齢者人口については、大都市では増加、地方都市では微増、人口の少ない地域では減少する、と見込まれている。
さらに、「新たな地域医療構想策定ガイドライン」には、「区域の設定」「必要病床数の設定」「医療機関機能の目標数の設定」「医師偏在指標」の4つの課題が示されている。
1つ目の区域の設定については、これまでは入院医療がその区域内で完結する二次医療圏(全国330医療圏)を基本として設定してきた。これに対して新地域医療構想では、医療機能の分化・連携をより推進することが可能と考えられる区域を単位とする。これからは、人口20万人以下の小規模医療圏が増加する。そのため、構想区域は複数の医療圏を統合する方向で見直しが進むだろう。
2つ目の必要病床数の設定については、新地域医療構想においては高齢化の進展によって入院患者の増加が見込まれるため、従来の医療資源投入量(医薬品、手術・処置など)に加えて、医療従事者の手間といった人的負担を考慮すべきという意見が出されている。これをどのように数値化・推計するかが、今後の大きな課題である。
3つ目の医療機関機能の目標数の設定については、大都市型、地方都市型、人口の少ない地域といった地域ごとに目標を設定し、それぞれの地域内で医療機関機能の連携、集約、再編を進めていくことが想定されている。あわせて、在宅医療や介護施設サービスの必要量についても、推計を行う必要があるとされている。
4つ目の医師偏在指標については、厚生労働省が新たな医師偏在指標を用いて、2036年時点における都道府県ごとの必要医師数を推計している。その推計によると、医師偏在対策が最も進んだ場合でも、12道県で合計5323人の医師不足が生じる見通しである。一方で、偏在解消が進まない場合には、34道県で2万3739人の医師が不足する可能性があるとされている。しかし、東京都では1万3295人の医師が過剰になるとされている。そのため、医師が不足している区域での医師確保対策と、医師が過剰な区域での新規参入の調整についても検討が必要である。
コロナ禍によって、2040年を見据えた変化が既に前倒しで始まっているとの指摘もある。特に、2030年には若年人口の急激な減少が見込まれており、その時点で多くの人が2040年の姿をリアルに実感することだろう。
武藤正樹(社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事)[地域医療構想][ガイドライン]