末梢血液検査は日常臨床でルーチン検査として診療科を問わず頻用されており,その結果,白血球増加に接する機会は非常に多い
白血球増加の際には,白血球分画のどの分画が増加しているかを確認することが鑑別の第一歩となるが,特に好中球増加は最も頻度の高い白血球増加である
好中球は,骨髄内に存在する多能性造血幹細胞が増殖,分化することにより産生される。形態的には骨髄芽球から前骨髄球,骨髄球,後骨髄球を経て成熟好中球(桿状核球,分葉核球)となる。末梢血液検査での白血球数は4000〜9000/μLがおおよその正常値であるが,うち50%程度は好中球である。したがって,血流中には10の10乗オーダーの好中球が存在している。血管壁にもほぼ同量の好中球が存在するとされており,辺縁プールを形成する。
さらに,骨髄には末梢血の10倍以上の貯蔵プールが存在する。好中球は骨髄から血中に移行するが,血中での半減期は6時間程度で,その後,組織に移行する。末梢組織での寿命は数日程度と考えられている。
好中球増加が最も経験されるのは感染症に伴うものであるが,感染症に限らず種々の生体反応の結果として生じうる。急性,一過性の好中球増加は,急性感染症や種々のストレスで惹起され,鑑別は容易であることが多いが,慢性的に好中球増加を示す場合では,時に診断に苦慮する場合もある。
好中球増加の原因としては,反応性の増加なのか,腫瘍性の増加なのかを鑑別し,反応性の場合は,その原因を確定していく必要がある。
図1に記載したような病態が挙げられるが,時には複合的な病態の結果として好中球増加を示す場合もある。臨床所見および検査所見の鑑別の進め方は下記の通りである。
①感染症をはじめとした急性反応では,貯蔵プールからの動員が生じるため好中球増加を示す。骨髄からの移行なので核の左方移動を伴う。
②種々の身体的・精神的ストレスは内因性のカテコラミンの分泌をまねくことにより好中球増加をもたらす。辺縁プールからの動員であり,核の左方移動は伴わない。
③副腎皮質ステロイドにより,組織への移行が低下することで好中球増加を生じる。
④慢性的な炎症刺激は,顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte-colony stimulating factor:G-CSF)をはじめとした種々のサイトカインの産生により,骨髄での顆粒球産生が亢進し,好中球増加を引き起こす。また,慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)のような血液腫瘍では増殖亢進,好中球の寿命延長により好中球増加を生じる。左方移動のみならず,未熟な骨髄系細胞の出現を伴うことも多い。
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