血糖降下薬のGLP-1受容体作動薬(GLP-1-RA)は2型糖尿病(DM)例の「心血管系死亡・心筋梗塞・脳卒中」(MACE)リスクを、プラセボだけでなくDPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬と比べても有意に抑制する(ランダム化比較試験ネットワーク・メタ解析)。
GLP-1-RAによるこのMACE抑制の機序は、必ずしも明らかになっていない。しかしこのたびGLP-1-RAが冠動脈プラークを安定化させる可能性が示された。オーデンセ大学(デンマーク)のLaurits Juhl Heinsen氏らが、2型DM200例余を1年間観察した結果である。BMC Cardiovasc Disord誌に4月28日付で掲載された論文を紹介したい。
同氏らが解析対象としたのは、無症候性の冠動脈疾患を認めた2型DM患者204例である。2016年3月から翌年9月の間にオーデンセ大学病院を受診した例から抽出された。平均年齢は61歳、73%が男性である。
うち27%がGLP-1-RAを使用しており、平均使用期間は4.6年だった。
これら204例を1年間観察し、冠動脈プラーク性状の変化をGLP-1-RA「使用」群と「非使用」群の間で比較した(冠動脈CT評価)。
その結果、1次評価項目である観察開始後1年間の「プラーク容積」変化幅は、GLP-1-RA「使用」群で「+38.0mm3」と増加傾向、「非使用」群は「−1.3mm3」の減少傾向だったが、両群の差は有意とはならなかった(P=0.134)。
同様に2次評価項目であるプラーク内「脂質主体壊死組織」(プラーク不安定化の一要因)容積の変化もGLP-1-RA「使用」群は「−13.8mm3」で、「非使用」群の「−9.8mm3」と有意差はなかった(P=0.695)。
他方、同じく2次評価項目である「プラーク内繊維質」(プラーク安定化に資する)は、GLP-1-RA「非使用」群の「−2.4mm3」に比べ、「使用群」では「+34.1mm3」の有意増加となっていた(P=0.035)。
Heinsen氏らはこれらの結果を「GLP-1-RAによるプラーク安定化」を示唆するものと評価し、その機序として、GLP-1そのものがプラークにおけるコラーゲン合成を促進し、結果としてプラーク皮膜の繊維化も進むとした、マウスで得られた知見などを挙げている。
なおGLP-1-RA「使用」群と「非使用」群では背景因子が異なる。
すなわち、両群間の高血圧と脂質異常症合併率、喫煙率には有意差がないものの、「使用」群では観察開始時点で脂質低下剤服用期間が長く(8.1年 vs. 5.8年)、またインスリン使用(51% vs. 35%)、メトホルミン服用(98% vs. 80%)例の割合が有意に高かった。
一方、観察開始時HbA1c値は「使用」群で有意に高く(8.1 vs. 7.5%)、糖尿病罹患期間も有意に長かった(13.5年 vs. 9.7年)。
本検討に製薬会社からの資金提供はない。