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【一週一話】メラノーマ治療のブレークスルー ─免疫チェックポイント阻害薬の出現

No.4773 (2015年10月17日発行) P.49

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-10

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  • 最近,癌に対する「新たな免疫療法」のニュースをしばしば目にする。癌に対する従来の免疫療法は,癌だけを標的とする免疫機能の攻撃力増強をめざすものが主体であった。しかし,近年開発された免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法は,免疫細胞に働きかけて,免疫細胞の攻撃力低下を回復させることによって抗腫瘍作用の回復を図る治療法であり,この点が「新しい」わけである。

    メラノーマ(悪性黒色腫)は色素産生細胞メラノサイトの悪性化で生じ,比較的早期から転移を生じやすい。一方,メラノーマ細胞は免疫原性が高く,免疫療法の有望な対象として数多くの治療法が考案・開発されてきたが,なかなか満足すべき結果が得られてこなかった。これはT細胞に発現する免疫チェックポイント分子と,腫瘍細胞や抗原提示細胞に発現するそれらのリガンドの結合によって,T細胞の疲弊とそれによる抗腫瘍免疫機能の喪失が生じることが一因であり,このため,理論的には有効性が期待される免疫療法が実際は効果を発揮できない。

    この結合(チェックポイント)のうち,メラノーマでみられるT細胞上のCTLA-4と抗原提示細胞上のCD28リガンドとの結合を阻害する抗CTLA-4抗体イピリムマブ(ヤーボイ1397904493)は,進行期メラノーマにおける生存期間延長効果が証明され,米国で2011年に初の免疫チェックポイント阻害薬として承認された。

    一方,わが国ではT細胞上のPD-1と腫瘍細胞に発現するPD-L1/PD-L2との結合を制御する抗PD-1抗体ニボルマブ(オプジーボ1397904493)の開発が進み,世界に先駆けて2014年に進行期メラノーマに対して保険適用を得た。これらの2薬剤とBRAF遺伝子変異阻害薬ベムラフェニブ(ゼルボラフ1397904493)が,過去1年間に進行期メラノーマに対して保険適用されており,治療におけるブレークスルーが一挙に起きたわけである。

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