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無疹性帯状疱疹(ZSH)が強く疑われるときに,外来でできる検査は?

No.5214 (2024年03月30日発行) P.47

渡邉大輔 (愛知医科大学皮膚科学講座教授)

登録日: 2024-03-28

最終更新日: 2024-03-26

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当方,皮膚科医。無疹性帯状疱疹(zoster sine herpete:ZSH)が強く疑われるとき,外来でできる検査があるでしょうか。耳鼻咽喉科で診断することがあると思いますが,良い方法があればご教示をお願いします。(宮崎県 A)


【回答】

【ZSHを正確に診断できる検査はない。痛みの性状やわずかな皮膚症状を手がかりにする】

ZSHは,皮膚症状を伴わない帯状疱疹の非典型的な臨床症状のひとつであり,罹患神経の神経障害性疼痛,Ramsay Hunt症候群などの初期症状だけでなく,帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia:PHN),水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus:VZV)脳炎や脳卒中などの致死的合併症を引き起こします。ただし,痛みは帯状疱疹以外でも一般的な主訴です。

明らかな臨床的原因のない片側の痛みで開業医を受診した患者が,どれくらいの頻度でVZV再活性化が出現するかを評価するために行われた研究では,57人の片側性の痛みを持つ患者群と,81人の健常者コントロール群に対し,PCR,抗体価をともに測定しました。28日間の研究期間中に帯状疱疹を発症したのは患者群の2人のみであり,患者群とコントロール群間でウイルスDNA量および抗体価に差はありませんでした。以上より,片側の痛みのみで抗体価による帯状疱疹の診断をするのは難しいと思われます。

ZSHの無疹部皮膚擦過から得た検体を用いたPCRが診断に有用であるとの報告がありますが,外来検査としては現実的ではありません。ただし,イムノクロマト法が有用なことがあります。ZSHを疑う症例でわずかな紅斑や丘疹があれば表面を注射針で擦過し,浸出液を採取してイムノクロマト法を行うと陽性所見が得られることがあります。また,ダーモスコピー検査も有用な場合があります。帯状疱疹の初期の病理像では表皮のごく一部に微小な感染像や,その周囲での出血像,真皮での密な炎症細胞浸潤により,時に偽リンパ腫様の像をとることがあります。帯状疱疹を疑う初期の皮疹でダーモスコピーを試みると,病理像を反映して微小出血や壊死像が見られることがあり,帯状疱疹を疑う根拠となります。

まったく皮膚所見のない場合,痛みの性状からZSHを推察することができるかについては,知覚過敏や低下を伴う片側の限局性の痛み(電気が走るような,刺すような痛み)があれば,皮疹がなくても帯状疱疹の可能性を考えます。現実的には,皮疹がない片側の痛みの場合は,原則的には数日待って皮膚症状が出現し,臨床診断がついてから治療を開始するのが望ましいです。しかし,前述のように知覚異常を伴う痛みが強い場合,皮疹がなくても治療を開始することがあります。ただし全例で実施すべきではなく,帯状疱疹を強く疑う例で考慮します。

【回答者】

渡邉大輔 愛知医科大学皮膚科学講座教授

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