ジェネラリストのための うつの診かた
「ライフスタイル精神医学」のすすめ
【ライフスタイルの観点から、うつの診かたを再考する】
目次
第1章 ライフスタイルからこころの健康をみる
1.1 本書で扱う範囲
1.2 うつ病・うつ状態とは何であるか
1.3 うつ病・うつ状態はなぜ治るのか
1.4 うつ病・うつ状態とは何でないか
1.5 心身二元論の超克
1.6 読者の皆さんへ
第2章 ライフスタイル医学としてのプライマリケア
2.1 生活習慣コンサルティング
2.2 ライフスタイル医学の潮流
2.3 現代人のライフスタイル
2.4 縄文人のライフスタイル
2.5 ライフスタイルに関連するメランコリー
2.6 ライフスタイル精神医学の実践
第3章 うつ病の病態仮説についての考察
3.1 うつ病の病態仮説
3.2 神経伝達物質の不均衡
3.3 HPA系の過活動
3.4 酸化・ニトロソ化ストレス
3.5 シナプス可塑性の低下
3.6 ミトコンドリア障害
3.7 慢性炎症
第4章 炎症仮説とSickness behavior
4.1 行動症候群としてのうつ病
4.2 Sickness behaviorとは
4.3 疾病時行動パターンの適応的意義
4.4 疾病時行動パターンと脳
4.5 捕食・被食関係と疾病時行動パターン
4.6 うつ病のパラダイム転換
第5章 うつ病と食事・睡眠・運動・アルコール
5.1 うつ病と生活習慣要因
5.2 食事とうつ病の関係
5.3 睡眠とうつ病の関係
5.4 運動とうつ病の関係
5.5 アルコールとうつ病の関係
5.6 精神療法・療養指導のために
第6章 生活習慣指導の実際
6.1 精神療法としての生活習慣指導
6.2 営業職;時間管理と精神的負荷の調整
6.3 霞ヶ関の官僚;長時間労働とメンタルヘルス管理
6.4 鮮魚店;早朝勤務と睡眠管理の重要性
6.5 フリージャーナリスト;メンタルヘルス管理と睡眠調整
6.6 看護師;交代勤務に伴うメンタルヘルス管理
6.7 三交代勤務;自宅療養後の復職計画と睡眠リズムの調整
6.8 客室乗務員;時差負荷と睡眠リズムの調整
6.9 経営コンサルタントのメンタルヘルス管理
6.10 システムエンジニア;管理職への移行と心理的負担
6.11 人文系研究者;孤立による抑うつと生活リズムの崩壊
6.12 資産家;ストレス過少がもたらす精神的脆弱性
6.13 海外駐在員の妻;孤立による適応障害の予防
6.14 定年を迎える会社員;検診にて抑うつ傾向を指摘
6.15 倉庫勤務;復職後にうつ症状が悪化
6.16 失業中のメンタルヘルス管理
6.17 派遣社員;屈辱と怒りのエネルギーをどう転換させるか
1.1 本書で扱う範囲
1.2 うつ病・うつ状態とは何であるか
1.3 うつ病・うつ状態はなぜ治るのか
1.4 うつ病・うつ状態とは何でないか
1.5 心身二元論の超克
1.6 読者の皆さんへ
第2章 ライフスタイル医学としてのプライマリケア
2.1 生活習慣コンサルティング
2.2 ライフスタイル医学の潮流
2.3 現代人のライフスタイル
2.4 縄文人のライフスタイル
2.5 ライフスタイルに関連するメランコリー
2.6 ライフスタイル精神医学の実践
第3章 うつ病の病態仮説についての考察
3.1 うつ病の病態仮説
3.2 神経伝達物質の不均衡
3.3 HPA系の過活動
3.4 酸化・ニトロソ化ストレス
3.5 シナプス可塑性の低下
3.6 ミトコンドリア障害
3.7 慢性炎症
第4章 炎症仮説とSickness behavior
4.1 行動症候群としてのうつ病
4.2 Sickness behaviorとは
4.3 疾病時行動パターンの適応的意義
4.4 疾病時行動パターンと脳
4.5 捕食・被食関係と疾病時行動パターン
4.6 うつ病のパラダイム転換
第5章 うつ病と食事・睡眠・運動・アルコール
5.1 うつ病と生活習慣要因
5.2 食事とうつ病の関係
5.3 睡眠とうつ病の関係
5.4 運動とうつ病の関係
5.5 アルコールとうつ病の関係
5.6 精神療法・療養指導のために
第6章 生活習慣指導の実際
6.1 精神療法としての生活習慣指導
6.2 営業職;時間管理と精神的負荷の調整
6.3 霞ヶ関の官僚;長時間労働とメンタルヘルス管理
6.4 鮮魚店;早朝勤務と睡眠管理の重要性
6.5 フリージャーナリスト;メンタルヘルス管理と睡眠調整
6.6 看護師;交代勤務に伴うメンタルヘルス管理
6.7 三交代勤務;自宅療養後の復職計画と睡眠リズムの調整
6.8 客室乗務員;時差負荷と睡眠リズムの調整
6.9 経営コンサルタントのメンタルヘルス管理
6.10 システムエンジニア;管理職への移行と心理的負担
6.11 人文系研究者;孤立による抑うつと生活リズムの崩壊
6.12 資産家;ストレス過少がもたらす精神的脆弱性
6.13 海外駐在員の妻;孤立による適応障害の予防
6.14 定年を迎える会社員;検診にて抑うつ傾向を指摘
6.15 倉庫勤務;復職後にうつ症状が悪化
6.16 失業中のメンタルヘルス管理
6.17 派遣社員;屈辱と怒りのエネルギーをどう転換させるか
序文
本書の目的は、ライフスタイルの観点から、うつの診かたを再考することにあります。
第1章では全体のアウトラインを述べ、第2章ではライフスタイル医学の一般論を述べています。どちらも、哲学的な無駄話をしたり、進化の問題を論じたり、縄文人の話をしたりして、適度に脱線しています。関心のない人は読み飛ばし、ムダ知識に興味がある人は気分転換に読んでみてください。
第3章は、うつ病の病態仮説についての考察です。内容は、私にとっては専門とはいえない「生物学的精神医学」に属します。間違いもあるかもしれません。専門家におかれましては、どうぞご指摘ください。
第4章は、第3章の生物学的次元を「行動症候群としてのうつ病」へと翻案するときに、欠かせない章です。特に、“Sickness behavior”という概念は、従来のうつ病理論にはない、新たな視点を提供しています。
第5章は、うつ病と生活習慣要因に関するエビデンスを概観しています。
第6章では、生活習慣指導の実践について、モデル症例をもとに論じています。サーカディアンリズムの安定と、個人の生活の再建を、どう両立させていくかのノウハウが記されています。
精神科医の先生方は、薬についての記載が少ないことにお気づきでしょう。先生方が診るうつ病・うつ状態の患者さんのうち、全体の7〜8割を占めるのは適応障害(抑うつ反応)と軽症うつ病です。これらの人には、抗うつ薬は効果がありません。でも、薬以外にいい方法があります。本書を読んで参考にしてください。
先生方のなかには、精神療法にアレルギーを持っている人もいるでしょう。「傾聴して、支持して、共感して…。それで治るのなら精神科医はいらない」、そんな風に思っている人もいるでしょう。そんな先生にこそ、読んでいただきたいと思います。
治療者の奉仕感情に頼った精神療法では、効果がありません。生活を変える、習慣を変える、行動を変える。それなくしては、患者は治らず、医師は燃えつき、相互不信だけが残ります。精神療法は「お悩み相談」のようにではなく、ジムのインストラクターのように、スポーツのコーチのように、ボイス・トレーナーのように、具体的な改善ポイントを的確に指摘することによってのみ、その目的が達成されます。
非・精神科医のジェネラリストの先生方は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、痛風などの患者さんに、運動、食事、飲酒などに関する指導をしておられると思います。その同じ方法で、うつ・不安・不眠に対しても療養指導を行ってください。睡眠に関しては、生活スケジュールを確認しなければなりません。その診かたは、第6章をご覧ください。
ただし、統合失調症や高齢者の幻覚妄想状態などの精神病状態については、精神科医にお任せください。また、うつ病の患者さんのうち、自殺リスクのある人も、精神科医にご紹介ください。それ以外は、本書を参考にしてください。特に、外来に一定数いる、心気的不定愁訴を訴える患者さんに関しては、ぜひ、本書の第6章を読んで参考にしてください。先生方の負担は、軽減されるはずです。
第1章では全体のアウトラインを述べ、第2章ではライフスタイル医学の一般論を述べています。どちらも、哲学的な無駄話をしたり、進化の問題を論じたり、縄文人の話をしたりして、適度に脱線しています。関心のない人は読み飛ばし、ムダ知識に興味がある人は気分転換に読んでみてください。
第3章は、うつ病の病態仮説についての考察です。内容は、私にとっては専門とはいえない「生物学的精神医学」に属します。間違いもあるかもしれません。専門家におかれましては、どうぞご指摘ください。
第4章は、第3章の生物学的次元を「行動症候群としてのうつ病」へと翻案するときに、欠かせない章です。特に、“Sickness behavior”という概念は、従来のうつ病理論にはない、新たな視点を提供しています。
第5章は、うつ病と生活習慣要因に関するエビデンスを概観しています。
第6章では、生活習慣指導の実践について、モデル症例をもとに論じています。サーカディアンリズムの安定と、個人の生活の再建を、どう両立させていくかのノウハウが記されています。
精神科医の先生方は、薬についての記載が少ないことにお気づきでしょう。先生方が診るうつ病・うつ状態の患者さんのうち、全体の7〜8割を占めるのは適応障害(抑うつ反応)と軽症うつ病です。これらの人には、抗うつ薬は効果がありません。でも、薬以外にいい方法があります。本書を読んで参考にしてください。
先生方のなかには、精神療法にアレルギーを持っている人もいるでしょう。「傾聴して、支持して、共感して…。それで治るのなら精神科医はいらない」、そんな風に思っている人もいるでしょう。そんな先生にこそ、読んでいただきたいと思います。
治療者の奉仕感情に頼った精神療法では、効果がありません。生活を変える、習慣を変える、行動を変える。それなくしては、患者は治らず、医師は燃えつき、相互不信だけが残ります。精神療法は「お悩み相談」のようにではなく、ジムのインストラクターのように、スポーツのコーチのように、ボイス・トレーナーのように、具体的な改善ポイントを的確に指摘することによってのみ、その目的が達成されます。
非・精神科医のジェネラリストの先生方は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、痛風などの患者さんに、運動、食事、飲酒などに関する指導をしておられると思います。その同じ方法で、うつ・不安・不眠に対しても療養指導を行ってください。睡眠に関しては、生活スケジュールを確認しなければなりません。その診かたは、第6章をご覧ください。
ただし、統合失調症や高齢者の幻覚妄想状態などの精神病状態については、精神科医にお任せください。また、うつ病の患者さんのうち、自殺リスクのある人も、精神科医にご紹介ください。それ以外は、本書を参考にしてください。特に、外来に一定数いる、心気的不定愁訴を訴える患者さんに関しては、ぜひ、本書の第6章を読んで参考にしてください。先生方の負担は、軽減されるはずです。