知る、やる、わかるの3stepで学ぶ
整形外科医のための他科疾患実践ガイド
「うちじゃない」症候群との向き合い方
目次
第1章 本書の使い方
1 整形外科医は他科疾患にどう向き合うか?
2 「整形外科における他科疾患」の定義
3 「うちじゃない」症候群, それは医療の細分化が生んだ必然
4 正論の前では「うちじゃない」症候群は通用しない
5 境界領域と他科疾患について
6 総合診療科と臨床推論
7 整形外科に臨床推論は過重である
8 技
9 心と体
10 整形外科医が他科疾患を診立てるために
11 診断エラーをめぐって
12 総合診療科医の判断力
13 第2章の歩き方
14 PMVV
2章 他科疾患について
1 筋萎縮性側索硬化症
2 急性胆囊炎
コラム 読影レポート
3 強直性脊椎炎
4 帯状疱疹
5 大動脈解離
コラム 道徳と経済
6 ポリファーマシー
7 下肢閉塞性動脈疾患
8 頭部疾患(脳血管障害・頭部外傷)
9 尿路結石症
10 静脈血栓塞栓症
11 参考文献~もっと深堀りしたい方のために~
あとがきにかえて
索引
1 整形外科医は他科疾患にどう向き合うか?
2 「整形外科における他科疾患」の定義
3 「うちじゃない」症候群, それは医療の細分化が生んだ必然
4 正論の前では「うちじゃない」症候群は通用しない
5 境界領域と他科疾患について
6 総合診療科と臨床推論
7 整形外科に臨床推論は過重である
8 技
9 心と体
10 整形外科医が他科疾患を診立てるために
11 診断エラーをめぐって
12 総合診療科医の判断力
13 第2章の歩き方
14 PMVV
2章 他科疾患について
1 筋萎縮性側索硬化症
2 急性胆囊炎
コラム 読影レポート
3 強直性脊椎炎
4 帯状疱疹
5 大動脈解離
コラム 道徳と経済
6 ポリファーマシー
7 下肢閉塞性動脈疾患
8 頭部疾患(脳血管障害・頭部外傷)
9 尿路結石症
10 静脈血栓塞栓症
11 参考文献~もっと深堀りしたい方のために~
あとがきにかえて
索引
序文
この本を手に取ってくださった皆さん,ありがとうございます。
本書の目的は,整形外科医が他科疾患とどう向き合うべきかを,臨床の現場に根ざした視点から考えるための実践的な手がかりを提示することにあります。そもそも,整形外科医は運動器疾患の専門家です。それなのに,なぜ整形外科医に他科疾患(その多くは内科です)の知識が必要なのでしょうか?
それは,骨折や関節痛といった局所所見が,実は全身疾患の一部として現れることが少なくないからです。局所だけを診ていては,原因にも,治療の方向性にもたどり着けません。整形外科医であっても全身を診る姿勢が大切です。木を見て森を見ず,では本質を見失ってしまうのです。
インドの寓話に「群盲象を撫でる」という話があります。6人の目の不自由な者たちが山奥を行脚していました。その道中,大きな象が道を塞いでいました。彼らはそれぞれが手を伸ばし象に触れます。尻尾を触った者は,「これは太い綱だ」と言います。一方で脚を触った者は「いいや,これは木の幹に違いない」と話します。同様に,耳・胴体・鼻・牙を触った者は,各々,扇・壁・蛇・槍と主張します。しかし,誰も全体像を把握していません。この状態では,不適切な対応が行われる可能性があります。たとえば,「これは太い綱だ」と考えて尻尾を引っ張っても, 象はびくともせず,道も依然として塞がったままでしょう。
医療も同じです。間違った前提のもとでは,どんなに熱心に治療しても,正しい成果は得られません。他科疾患であったならば,どんなに一所懸命に整形外科的な治療を施しても,患者さんは治らないのです。
自己紹介が遅れました。私は井上三四郎と申します。1999年に整形外科医になり,地方の中核病院で勤務を続けてきました。少し変わった経歴として,2022年から3年半ほど,総合診療科(GIM)で働きました。その経験は,私を風変わりな整形外科医にしました。 整形外科医が他科疾患を診るというテーマは,突き詰めれば「診断学」に行き着きます。総合診療の世界では日々議論される診断プロセスも,整形外科では必ずしも体系的に扱われていません。整形外科医はとことん骨や関節という局所に拘り,手術を含めた治療を行います。総合診療医は逆に,患者さんを丸ごととらえて全体を俯瞰していきます。両者はまるでジキルとハイド,気質も発想も違います。
幸か不幸か,私の中にはその両方がいます。手術にワクワクするハイドもいれば,診断を考えることが好きなジキルもいます。本書が扱うテーマは,二面性を持つ私にとって非常に親和性が高いと考えています。
本書が,整形外科医がより広い視野で患者さんを診るためのヒントになれば幸いです。
2026年1月
井上三四郎
本書の目的は,整形外科医が他科疾患とどう向き合うべきかを,臨床の現場に根ざした視点から考えるための実践的な手がかりを提示することにあります。そもそも,整形外科医は運動器疾患の専門家です。それなのに,なぜ整形外科医に他科疾患(その多くは内科です)の知識が必要なのでしょうか?
それは,骨折や関節痛といった局所所見が,実は全身疾患の一部として現れることが少なくないからです。局所だけを診ていては,原因にも,治療の方向性にもたどり着けません。整形外科医であっても全身を診る姿勢が大切です。木を見て森を見ず,では本質を見失ってしまうのです。
インドの寓話に「群盲象を撫でる」という話があります。6人の目の不自由な者たちが山奥を行脚していました。その道中,大きな象が道を塞いでいました。彼らはそれぞれが手を伸ばし象に触れます。尻尾を触った者は,「これは太い綱だ」と言います。一方で脚を触った者は「いいや,これは木の幹に違いない」と話します。同様に,耳・胴体・鼻・牙を触った者は,各々,扇・壁・蛇・槍と主張します。しかし,誰も全体像を把握していません。この状態では,不適切な対応が行われる可能性があります。たとえば,「これは太い綱だ」と考えて尻尾を引っ張っても, 象はびくともせず,道も依然として塞がったままでしょう。
医療も同じです。間違った前提のもとでは,どんなに熱心に治療しても,正しい成果は得られません。他科疾患であったならば,どんなに一所懸命に整形外科的な治療を施しても,患者さんは治らないのです。
自己紹介が遅れました。私は井上三四郎と申します。1999年に整形外科医になり,地方の中核病院で勤務を続けてきました。少し変わった経歴として,2022年から3年半ほど,総合診療科(GIM)で働きました。その経験は,私を風変わりな整形外科医にしました。 整形外科医が他科疾患を診るというテーマは,突き詰めれば「診断学」に行き着きます。総合診療の世界では日々議論される診断プロセスも,整形外科では必ずしも体系的に扱われていません。整形外科医はとことん骨や関節という局所に拘り,手術を含めた治療を行います。総合診療医は逆に,患者さんを丸ごととらえて全体を俯瞰していきます。両者はまるでジキルとハイド,気質も発想も違います。
幸か不幸か,私の中にはその両方がいます。手術にワクワクするハイドもいれば,診断を考えることが好きなジキルもいます。本書が扱うテーマは,二面性を持つ私にとって非常に親和性が高いと考えています。
本書が,整形外科医がより広い視野で患者さんを診るためのヒントになれば幸いです。
2026年1月
井上三四郎