だから医学は面白い
幻(ビジョン)を追い続けた私の軌跡
日野原重明103歳の医学・医療論 華麗なるプロフェッショナル人生の集大成!
目次
日野原先生へのメッセージ ─ 志水太郎/小島操子
序 医学は面白くてしょうがない!
今の臨床医に欠けているもの
教科書通りに行かないから面白い
I アートとしての医学 看護と融合する医学
医学はサイエンスに支えられたアートである
ウィリアム・オスラーの生涯
●コラム1 晩年のオスラー博士
私とオスラーとの運命的な出会い
オスラーの人生指針=ゴールデンルールズ
医学は看護とマージしないと使命を果たせない
音楽・宗教・哲学と医学の交わり
医師は「言葉を使うプロフェッショナル」
医師のうちにある悪魔的な欲望
医師は患者に学ぶことによって成長する
II 医師として成熟するための数々の試練
姉と競い合った少年時代
左翼思想に傾倒した三高時代
真下内科で食道内心音の研究に打ち込む
アメリカの一流医学誌に採用される
アメリカ留学で受けた衝撃
人前で「I don't know」と言える勇気
生命の危機を感じたよど号事件
第二の人生の出発
リーダーシップが試された地下鉄サリン事件
●コラム2 1995年3月20日の記録
III 日本の医療システムを変えていく
武見太郎と橋本寛敏
臨床研修・医学教育の改革に挑む
日本の医療のどこが間違っているのか
プライマリ・ケア機能の整備が遅れている
●コラム3 私は「開業医」
世界に誇る日本の予防医療
健康教育のポイントは「何をよく食べないか」
IV 次世代リーダーへのメッセージ
「人生のモデル」を持つことの大切さ
「テンダーマインド」で傷ついた心をサポートする
日野原流診察術
●コラム4 日野原流講演術
日野原流時間活用術
ターミナルケアは時間を超越する
いつまでも「新しいことへの挑戦」を続けよう
あとがき ─ 近況に触れて
主要参考文献
人名索引
序文
幼い頃の日々は、私にとっては宝物のような思い出です。一つのエピソードを思い出すと、それに続けていろいろな出来事が当時の空気とともにまざまざと蘇ってきます。神戸での関西学院中学部の時代、そして京都での第三高等学校の理科学生の生活、京都大学医学部の時代は、いずれも哲学と文学と音楽に親しんだまさに輝ける時でもありました。20代の時の肺結核の体験も、今になってみれば青春時代を彩る思い出の一つとなっています。
そして、医師になってから今日までの日々は飛ぶように過ぎていったと言えるでしょう。
本書は、「幻(ビジョン)」を追い続けてきた自分の人生を振り返りつつ、次世代の医療者、そして、日本の医療がより良くなることを願う一般の方々に向け、いま伝えたい私の医学・医療論をまとめたものです。
医学というものは、多くの人が考えるよりもはるかに広く諸科学に関係する学問であり、それを医療として実践する時には、医師・看護師ら医療従事者と患者・家族が一つのチームとなって取り組むことが重要であるということ、そして、医学は常に発展途上で臨床現場には日々発見があり、医師は常に未完成の状態にある、だからこそ医学は面白い、という私のメッセージが一人でも多くの人の心に届くことを願っています。
103歳を迎える今、まだまだやりたいこと、見届けたいことはたくさんあります。
いつまでいのちが許されるのかはわかりませんが、あらためて私の人生をじっくりと振り返る機会を与えてくださった日本医事新報社に心からお礼を申し上げます。
レビュー
「日野原先生へのメッセージ」より
次世代の医療者へのメッセージを凝縮した本 志水太郎(ハワイ大学内科・医師) 本書は、日野原先生が医師として追求されてきたこと、次世代の医療者へのメッセージを凝縮した本である。『だから医学は面白い』というタイトルに、日野原先生の医学を愛する医師としての生き様が見える。「幻(ビジョン)を追い続けた」とサブタイトルにもあるように、明確なビジョンを設定し、諦めず道を追求されてきた姿が日野原先生を日野原先生たらしめていると思う。
小島操子(聖隷クリストファー大学学長・看護師)
華麗なるプロフェッショナル人生の集大成
本書は、日野原先生の華麗なるプロフェッショナル人生の集大成と言えるもので、内容もとても興味深く、思わず引き込まれ、先生の人間としての、また、プロフェッショナルとしての生き方・過ごし方に強い感銘を受けました。
鎌田 實(諏訪中央病院名誉院長)
【書評】すべての医療従事者に読んでもらいたい一冊
心不全が悪化した45歳の女性がいた。強心薬で治療したが、なかなか改善しない。実は、女性はエレベーターのないアパートの3階で子ども2人を育てていて、毎日階段の上り下りをする生活だった。それを知らずに私は外来で投薬をしていた。1階の住居に転居してもらったら、心不全の進行は止まった─。 著者はこうした、生活歴の聞き取りが不十分だった自らの体験を例に挙げ、患者さんとのコミュニケーションの大切さを訴える。 著者は「医学はサイエンスに支えられたアートである」と繰り返し述べている。アートとは「技(わざ)」を指し、理論では語りきれない部分も含まれる。だから医療従事者は、医学だけでなく、心理学、統計学、社会学、文学、音楽、宗教、哲学などを身につけている必要があると説く。著者の真骨頂である。 面白いのは、すべての医療従事者に読んでもらいたい本を紹介する中で、『チャタレイ夫人の恋人』(D・H・ロレンス)をこころの一冊として挙げていることだ。 次の一文も興味深い。「私たち医師は、人間には悪魔的な考えがあるということをよく認識し、常に自らを戒める必要がある」。患者さんも医療従事者も人間である限り、悪魔的な部分をもっている。それをよく理解しながら、自らを正し、テンダーマインドで傷ついた心を癒し、ヒューマニティの精神で医療を続ける必要があるという。医療従事者も医療に携わることによって癒され成長していくという考え方は、医療にかかわる人すべてを謙虚にし、同時に、医療の本質を教えてくれる。 103歳の著者は、自らの健康管理についても余念がない。最近体調を崩し体重が減ってきたので、1日の摂取カロリーを1300kcalから1600kcalに増やした。体力を戻すために、新しい健康法もはじめている。「まだまだやりたいこと、見届けたいことはたくさんあります」と語る日野原先生。医師としてだけでなく、新しい高齢者像としても目が離せない。