時間治療学
投薬のタイミングと効果
服薬指導にこの一手!
目次
chapter Ⅰ 総論
1 生体時計
2 時間薬理学
chapter Ⅱ 各論
1 虚血性心疾患
2 高血圧
3 脳梗塞
4 静脈血栓塞栓症
5 気管支喘息
6 てんかん
7 悪性腫瘍
8 変形性関節症,関節リウマチ
9 脂質異常症
10 糖尿病
11 骨粗鬆症
12 感染症
13 不眠,うつ病
14 消化性潰瘍
15 臓器移植
16 アレルギー疾患
17 腎疾患
18 疼痛性疾患
19 妊娠高血圧症候群
20 緑内障
21 多発性硬化症
序文
一方,時間治療学についても地道な努力が続けられ,その成果は徐々に臨床に取り入れられたが,大きな注目を浴びることはなかった。しかし,数年前にNHK「クローズアップ現代」に時間治療学が取り上げられたことを契機に注目を浴びることになり,その後,ほかのマスコミにも「薬をより適切に使用するための方策のひとつ」として紹介されるようになった。このように時間治療学に対する社会の認知度は確実に向上しているが,一方,日常診療で時間治療学的特徴を考慮して薬を処方している医師は非常に少ないのが現状である。
改訂第2版では,臨床の現場で時間治療学的観点から処方が行われている21の疾患・病態を取り上げ,それぞれについて最新の情報をまとめた。本書が薬の適正使用の情報源として活用され,薬物療法が向上すれば幸いである。
最後に,本書の編集・出版にご協力いただいた日本医事新報社の磯辺栄吉郎様に厚く御礼申し上げます。
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藤村昭夫
レビュー
田中榮司(信州大学医学部内科学第二講座教授)
【書評】臨床医の極意「時間治療学」をわかりやすく、実践的に解説
これまで「時間治療学」を知る医師の数は少なかったが、数年前にNHKテレビの『クローズアップ現代』に取り上げられたことからその知名度を増した。これは、薬をより適切に使用するための方策の1つであり、画期的な効果を示すことも少なくないことから、臨床医にとって重要な領域として内科学会の教育講演会にも取り上げられるようになった。 時間治療学の背景には生体時計の存在があり、これが大きな役割を果たしている。日常生活で生体時計を意識することは少ないが、たとえば海外で時差ぼけになるとこの存在を痛感する。皆がその存在を感じていながら何となく軽く扱われてきた生体時計であるが、1997年に時計遺伝子が発見され科学的な解明がなされるようになった。 治療に用いる薬物には投与時刻によって有効性や安全性が異なることがあり、この点を明らかにする研究分野を時間薬理学と言う。さらに、この時間薬理学的特徴を考慮して薬物の用法・用量を決めるのが時間治療学となる。経口投与された薬物は吸収、分布、代謝、排泄の過程を経るが、それぞれの生体機能には日内リズムが存在するため、投与時間により血中薬物濃度が変化することがある。たとえば、吸収については昼間に投与したほうが血中濃度は高くなりやすく、分布では薬物の蛋白結合率には日内リズムが存在するため結合率の高い薬物は注意が必要である。さらに、薬物代謝の重要な酵素であるCYP3 A 活性は夕方に最大となる。 本書では、時間治療学を総論と各論に分けて記載している。総論を読むと理論的な裏付けが理解でき、なるほどと思う。次に各論を読むと、薬物によってはその影響の大きさに驚く。そして、よく考えると、いろいろと思い当たることが出てくる。時間治療学は臨床医の極意と言えるものであり、これをわかりやく、かつ実践的に解説した本書は一読の価値がある。