苦しむ患者さんから逃げない!
医療者のための 実践スピリチュアルケア
緩和ケアのためのバイブル! 良き理解者となるために!
目次
第1章 緩和ケアが広がるために
第2章 スピリチュアルペインを理解するための認識論
第3章 信念対立を克服するための現象学
第4章 スピリチュアルケアを理解するための存在論とスピリチュアルペイン
第5章 事例を通して学ぶ3つの存在論
第6章 3つの柱で支えられた平面モデル
第7章 援助的コミュニケーション
第8章 会話記録による学び(良い聴き手になるために)
第9章 スピリチュアルペインのアセスメントとケアの実際
第10章 スピリチュアルペインのアセスメントとケアの実際〈応用編〉
第11章 援助者のスピリチュアルペイン
序文
少しでも患者さん・家族の力になりたい。少しでも患者さん・家族にとって良いサービスを提供したい。─?医療従事者としていつも願うことです。そのために、医師であれば病気の診断や治療に関する新しい知見を学ぶことは欠かせません。看護師でも、良い看護を展開するためにも、研修を定期的に受けていく必要があるでしょう。遺伝子レベルの研究が進み、医療の世界は日々進歩しています。一昔前ならば、治ることはないと言われていた病気が治ることによって、患者さんは社会復帰することができる時代となりました。
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レビュー
的場康徳/鹿児島大学大学院腫瘍制御学
【書評】スピリチュアルケア論と豊富な実践例の指南書
スピリチュアルペイン(自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛)は、臨床現場でしばしば出合う苦しみにも係わらず、がん診療にかかわる医師の多くはこの痛みにどう対応したらいいのかを知らない。患者から「こんな治療をしたって意味がない!」、「みんなに迷惑をかけてまで生きていたくない!」と訴えられると、言葉に詰まったり、医学的な説明を繰り返し行ったりするが、その説明が患者の心に響いていないことは経験者ならわかると思う。 その理由は、患者の訴えが身体的でも、心理・精神的でも、社会的でもない問題、すなわちスピリチュアルペインであるからだ。そして、既存の医学教育や卒後研修には、スピリチュアルペインに対する理論も技術も存在しない。 「この問題を解決できない限り、たとえがん対策基本法が施行されても、適切な緩和ケアが普及する可能性は厳しい」と著者の小澤先生が指摘する「この問題」とは、医療のパラダイムが置き忘れてきた、あるいは避けてきたスピリチュアルケアのことを意味する。 本書は、京都ノートルダム女子大学大学院教授、村田久行先生の対人援助論とスピリチュアルケア論、いわゆる村田理論を小澤先生流の味付けをしつつ、紹介してくれる。村田理論は、それまで感性やフィーリングで語られることが多かったスピリチュアルケアを、哲学的アプローチで言語化し、理論的裏付けのある行為として確立したものである。 小澤先生は緩和医療の豊富なご経験を基に、理論の紹介と実践例を一つひとつ丁寧に解説してくれる。また、多数の講演会のご経験も生かし、理論を平易に解説するための創意工夫が随所に施されている。例えば、人間の存在を三つの柱で支えられた平面モデルで説明するのは小澤先生オリジナルで、初心者にも概念をイメージしやすいように考案されたという。 医療者がスピリチュアルケアの理論と技術の存在を知ることで、スピリチュアルペインを抱く患者やその言葉から逃げない、避けないためのきっかけとなる本書をお薦めしたい。
小澤竹俊/めぐみ在宅クリニック 院長
自著紹介
この本で紹介したかったことは、一言でいうと“逃げないこと”です。どれほど臨床経験を積んでも、私たちはしょせん弱い一人の人間にすぎません。死を前に苦しむ人の前で、何かできるのかといえば、ほとんど何もできないに等しいかもしれません。それでも逃げないで、苦しむ人と関わり続けることのできる私たちでありたいと願います。 ただ逃げないでそばにいろといっているわけではありません。向き合うには、向き合うだけの確かな根拠を示したいと思っていました。そこで登場するのが、スピリチュアルケアの理論的な枠組みです。言葉を失うような場面に遭遇しても、逃げないで関われる可能性を持ち続ける時、苦しむ人と最期まで向き合うことのできる真の援助者の道が拓かれます。この本が、少しでも、苦しむ人と向き合いたいと願う援助者のお役に立てれば、これ以上の喜びはありません。