開業医療の新パラダイム
人生の旅モデル
開業医療は楽しい! これからの開業医を目指す方,必携の一冊
目次
序 章
1 必要としての開業医療―開業医療の長所と短所
2 開業医のidentity―どのような特性をもつか?
3 開業医療におけるコミュニケーション
1.その独自性とは?
2.新しいコミュニケーション技法―医療面接技法
3.良好なコミュニケーションのための道具立て
4.雑談医療
4 患者の受診理由とは?
―主訴という医学用語を脇に置いて
5 診療における時間の問題
1.患者中心のtime management
2.限られた診療時間の効率的活用
6 患者中心の医療を脅かす“神話”
7 重要な医療パートナーとしての家族
8 町医者・村医者の試金石としての在宅医療
9 医療活動における開業医の生きがい
10 見届け医療
1.開業医にとっての医療連携
2.対診consultationと紹介refferral
11 人生の旅モデル
1.開業医療の新パラダイム
2.生きがいを看護り,支え,邪魔せぬ医療
3.旅の途上での出来事と健康問題
4.連れとしての民族誌学者―開業医
5.The wounded healer 痛みを知る癒し手
6.病いと向き合いつつ,一回性・個別性を生きる人々
12 説明困難な身体症状に挑む
1.不定愁訴・自律神経失調症とは?
2.somatization(身体症状化)という知見の導入
3.身体症状が増幅されるしくみ
4.somatizationが開業医に問うもの
13 建前と本音―いいじまクリニック5年間の歩み,今後の課題"
レビュー
津田 司・三重大教授
書評
このようなタイトルの本となると、大方の人は、開業医の長年の経験に基づいた自叙伝風の著作だと考えるであろう。しかも、序章で、「ついに開業にたどり着いた、開業医療はやりがいがある」と書かれ、章立てを見ても、開業医療の長所と短所、患者中心の医療を脅かす“神話”と出てくると、やはりそうだと思ってしまう。 しかし、読み進むにつれて自分の経験症例がふんだんに散りばめてあるものの、その症例を基にして多くの文献からエビデンスを加えて解説がなされており、プライマリケア医のための教科書といっても過言ではないことがわかる。 開業医療におけるコミュニケーションの重要性、患者の主訴とは別に、真の受診理由が重要であること、積極的に家族と医療チームを形成することの重要性│などが科学的根拠に基づいて記述されており、多くのプライマリケア医の参考になるものと思われる。 そして、圧巻は著者の得意とする行動医学を積極的にプライマリケアに取り入れた医療のあり方を提案している章である。開業医が患者と継続的に関わるには、患者の人生の旅を支援するという考え方が大切であり、そのための臨床モデルを提唱している。その延長線上で、不定愁訴を持つ患者への対応法が非常にわかりやすく、かつ科学的根拠に基づいて解説されている。 このように、これまでのプライマリケアであまり注目されてこなかった領域に焦点が当てられており、現在の開業医師はもちろんのこと、これから開業を目指す医師にもぜひ一読されることを薦めたい本である。
飯島克巳・いいじまクリニック院長
自著紹介
プライマリ・ケアの現場は、患者の受診ニーズにおいても、必要とされる医師の能力についても、「何でもあり」の世界です。ここでは、数年ときには数十年の長期にわたる患者─医師関係が展開されます。また開業医療は、自由度が大きいこと、創意工夫を活かしやすい点に魅力があります。 本書では、プライマリ・ケアとしての開業医療のこのような独自性、その同一性を追求しました。さらに開業医を、患者の生活、人生を支え続ける医療専門職として位置づけ、その方法を図に示し、これを「人生の旅モデル」と名づけました。このモデルでは、医師と患者以前の人と人との出会い方、健康問題に対する包括的な評価法、患者の人生の旅を支援し続けるための方法などを取り上げ、著者の経験と既知の研究成果をもとに、これらについてわかりやすく解説しました。