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インフルエンザ・COVID-19・RSV診療ガイド2026-27

コモンな呼吸器ウイルス感染症診療のスタンダードを知る1冊

インフルエンザ・COVID-19・RSV診療ガイド2026-27

●主要な呼吸器ウイルス感染症をまとめて解説しました。コモンディジーズの知っておきたいトピックが1冊でわかります。
●2026年はワクチン供給よりも早く流行が開始しましたが,早期診断・早期治療は有効です。
●RSVの母子免疫ワクチン,新しい抗体製剤についても詳述。
●簡便・迅速・高感度・他項目同時測定などの各種検査,治療薬の使い分けについても,各種ガイドラインを踏まえて解説しています。

●主要な呼吸器ウイルス感染症をまとめて解説しました。コモンディジーズの知っておきたいトピックが1冊でわかります。
●2026年はワクチン供給よりも早く流行が開始しましたが,早期診断・早期治療は有効です。
●RSVの母子免疫ワクチン,新しい抗体製剤についても詳述。
●簡便・迅速・高感度・他項目同時測定などの各種検査,治療薬の使い分けについても,各種ガイドラインを踏まえて解説しています。

編著
菅谷憲夫 (神奈川県警友会けいゆう病院 名誉参事,前 神奈川県警友会けいゆう病院 感染制御センター長,WHO Public Health Research Agenda for Influenza 委員)
判型B5判 ページ数256 刷色2色刷 発行日2026年10月19日 ISBN978-4-7849-5495-7 付録無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) 診療科
紙の書籍
税込4,950円

この商品は予約商品となりますので、ご発送は発売後となります。

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目次

●総論
chapter 1.インフルエンザ総論
A.総 論(菅谷憲夫)
topics.世界が認めた日本のインフルエンザ診療test-and-treat(菅谷憲夫)
B.鳥インフルエンザの最新状況(伊藤壽啓)

chapter 2.インフルエンザのウイルス学的知見(高下恵美)

chapter 3.インフルエンザの予防・治療
A.成人,高齢者(石田 直)
B.小 児(田村大輔)
C.妊 婦(宮越 敬)

chapter 4.インフルエンザワクチン
A.不活化インフルエンザワクチン(新庄正宜)
B.経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(菅谷憲夫)

chapter 5.インフルエンザ治療薬(佐藤晶論)

chapter 6.COVID-19の予防・治療
A.成人,高齢者(大曲貴夫)
B.小 児(宮入 烈)
C.COVID-19ワクチン(中山哲夫)

chapter 7.RSウイルス感染症の予防・診断・治療
A.高齢者(倉井大輔)
B.小 児(橋本浩一)

chapter 8.インフルエンザ・COVID-19の検査(三田村敬子,山崎雅彦,市川正孝)

chapter 9.インフルエンザ脳症,COVID-19やRSウイルス感染症に伴う急性脳症の診断・治療(奥村彰久)

chapter 10.呼吸器ウイルスの院内感染対策(宇野俊介,長谷川直樹)

chapter 11.呼吸器ウイルス感染症の学校での感染症対策(康井洋介)

●Q&A
Q1 インフルエンザ:昨年のサブクレードKの流行状況について。何か特徴はありましたか?(長谷川秀樹)
Q2 インフルエンザ:昨年のA香港型,サブクレードKで,小児では熱性けいれんが多発したと聞きました。小児科臨床医として,何か注意すべき特徴はありましたか?(山崎雅彦)
Q3 インフルエンザ:rapid NAATは,従来の迅速診断と比べてどのような利点・特徴がありますか?全国での普及状況,コスト,保険上の問題点について(栁原克紀)
Q4 インフルエンザ:高用量インフルエンザワクチンのオフターゲット効果について。(永井英明)
認知症リスク低減や心血管イベント抑制効果はどのように考えたらよいでしょうか?
Q5 COVID-19:long COVIDを訴える患者への対応は?(森岡慎一郎)
Q6 RSV:『小児RSウイルス呼吸器感染症診療ガイドライン2026』改訂要点について(吉原重美)
Q7 全般:マスク・手洗い・うがい,種々の室内空気感染対策のインフルエンザ,COVID-19,RSVに対する予防効果について(西村秀一)

序文

序
本診療ガイドは,最初に2010年10月に『インフルエンザ診療ガイド2010-11』として発刊された。2020年11月には『新型コロナウイルス感染症流行下のインフルエンザ診療ガイド2020-21』と,インフルエンザにCOVID-19を加えて発刊した。その序文で,筆者は以下のように記述した。
「国内初のCOVID-19死亡例が報告された2月以後も,依然としてマスコミで流れているのは,COVID-19は季節性インフルエンザ程度の感染症であり,恐れることはないという論調である。これは明らかな誤りである。季節性インフルエンザ程度の死亡率,重症度の疾患であれば,WHOが非常事態宣言をすることはないし,中国が莫大な経済的な損失にもかかわらず,大規模な都市封鎖を実施するわけがない。」
日本政府からは,日本のCOVID-19の死亡者は少なく,日本のCOVID-19対策は成功したという意見を聞くことがある。しかし,COVID-19による日本の累計超過死亡者数は2023年には約27万人,2024年6月には約34万人に達し,人口10万人当たりではフランスを抜き,またアジアでも人口10万人当たりの超過死亡者数は台湾,シンガポール,韓国が明らかに日本よりも低く,日本のCOVID-19対策が成功したとは言えない。
2023年には本書は,『インフルエンザ・COVID-19・RSV診療ガイド2023-24』とした。筆者が理事をしていた国際インフルエンザ学会も,International Society for Respiratory Viruses(ISRV)となり,インフルエンザ,COVID-19,RSVの3部門が合同した学会となった。今まで,主に小児科疾患であったRSウイルス感染症も高齢者の重要な疾患と認識されるようになった。本書の執筆の先生方も,COVID-19,RSウイルスの新たなメンバーが加わった。
これからは,第一線の臨床医は3種類の呼吸器ウイルスの予防,診断,治療に精通する必要があり,本書が少しでも有用であることを願っている。

【日本のインフルエンザ流行】
▪最近のインフルエンザ流行
日本ではCOVID-19出現後,2020-21年,2021-22年と2シーズン連続してインフルエンザ流行はなかった。その後,2022-23年シーズンはA(H3N2)による小規模流行,2023-24年はA(H3N2),A(H1N1)pdm09,B型による大規模な混合流行となり,流行期間も9カ月と長期にわたった。これは2シーズンにわたり流行がなく,国民のインフルエンザに対する免疫が低下した影響と考えられた。2024-25年シーズンは11月中旬からA(H1N1)pdm09の流行が始まり,12月には全国的に警報レベルに達したが,2025年1月には患者数は減少し,中規模のA(H1N1)pdm09の流行であった。
▪昨シーズン(2025-26年)はA香港型の変異ウイルス,subclade Kの流行
昨年は9月末,第39週(9月22日〜28日)に全国の定点当たり報告数が1.04となり,インフルエンザの流行入りとなった。流行ウイルスは,A(H3N2)の変異ウイルスであるsubclade Kであった。10月末,第43週(10月20日〜26日)には,東京,神奈川,埼玉,千葉と,首都圏の4都県で定点当たり報告数が10を超え注意報が発令された。11月,第45週(11月3日〜9日)には,全国の定点当たり報告数が21.82となり,特に患者数の激増した首都圏には警報が発令された。重症化しやすく,超過死亡の原因となるA(H3N2)の変異ウイルスの流行であったので,年末にかけて全国的な大規模流行が懸念された。しかし,2026年以降は終息傾向となり,2月からはB型の流行が主体となった。
▪遅れた変異ウイルス流行情報
原因ウイルスは,英国と同じA香港型インフルエンザ,A(H3N2)の変異ウイルス,subclade K株であったが,おそらく首都圏を中心にインバウンドの旅行客により持ち込まれたと考えられた。英国で発生したsubclade Kは「10年に一度」という抗原変異株であり,日本では9月末からsubclade K株の流行が始まっていたにもかかわらず,その情報が国民に伝わったのは11月末の日本経済新聞によるもので,政府発表ではなく,情報提供は筆者などインフルエンザ研究者からであった。変異ウイルスの情報は欧米諸国よりも2カ月も遅れて国民に伝えられたが,結果的に大きな被害を生じなかったのは幸いであった。首都圏で注意報となった時点で厚生労働省は国民に変異ウイルスのsubclade K流行の可能性を伝えて,インフルエンザワクチン接種を強く勧奨すべきであった。

【欧米の2025-26シーズンのインフルエンザ流行】
▪英国,A香港型の変異ウイルス,subclade Kの流行
英国では,2025年10月後半に若年層中心にA(H3N2)が増加し,2025年12月第2週にピークに達し,その後減少した。流行ウイルスは,A香港型(H3N2)のsubclade Kが多数を占めた。シーズン全体の流行レベルは,変異にもかかわらず,前年に比べ低かった。subclade Kは7箇所のアミノ酸の変異を持ち,昨年2月に選択されたWHOのワクチン候補株と比較して大幅な抗原変異が認められ,従来のA(H3N2)ウイルスよりも感染力が強く,基本再生産数は従来株より上昇した。英国のインフルエンザ専門家は,“最近の10年で最悪のインフルエンザのシーズン”になる可能性があると警戒した1)。
英国でのsubclade Kに対するワクチンの入院防止効果(重症化防止効果と同じ)は,英国保健安全保障庁(UK Health Security Agency:UKHSA)から報告され,成人では21〜34%,小児においては51〜68%であった。また,イングランドでのインフルエンザに起因する超過死亡者数は3,798人と推定され,2024-25シーズン(9,740人)および2023-24シーズン(4,431人)よりも少なかった2)。
英国で成人に使用されているワクチンは,細胞培養ベースの不活化ワクチンである。日本の鶏卵ベースの不活化ワクチンとは異なっているので,日本のワクチン効果は不明であるが,英国では最低限の入院防止効果は認められた。一方,英国の小児は経鼻生ワクチンを使用しており,UKHSAの調査により,今回の変異ウイルスにも十分な入院防止効果があることが明らかにされた。経鼻弱毒生ワクチン(フルミスト®)は,日本国内でも一部で使用されたが,今回の変異ウイルスに一定の有効性があったと思われる。

【今季,日本は8月28日に流行入り】
日本では2026年,夏の8月28日に,定点当たりの患者数が1.11となり,インフルエンザ流行入りとなった。昨年,日本はA(H3N2)の変異ウイルスsubclade K出現により9月末に流行入りしたが,今季は,驚くべきことに,さらに5週も早まった。現時点では(9月12日),A(H1N1)pdm09が主流となり,昨年流行したA(H3N2)は少数となっている。
世界で大きな流行が発生しているのは,台湾のA(H1N1)pdm09,ニュージーランドのA(H3N2)となっているが,他のアジア諸国や欧米では大きな流行はない。台湾は7月から流行が始まり,夏季としては10年ぶりの大規模流行で,9月中旬以降にピークとなる。重症例,死亡例も報告され,抗インフルエンザ薬が広く解禁された。
台湾では,通常,高齢者などハイリスク以外では,抗インフルエンザ薬は使われない。日本の季節外れの流行は,おそらく台湾からの持ち込みと思われるが,変異は特に報告されていない。今季は,A(H1N1)pdm09,続いてA(H3N2),さらに2027年春には,B型インフルエンザと長い流行期間となるかもしれない。早い流行に対して,ワクチンは間に合わない場合もあるが,早期診断と早期治療は確実に有効である。

文献
1) 菅谷憲夫: 今シーズンは抗原変異したA香港型インフルエンザに警戒─英国では変異ウイルスが流行し10年に一度の大規模流行か. 医事新報. 2025;(5303): 38-43.
2) GOV.UK :Influenza in the UK, annual epidemiological report:winter 2025 to 2026. 2026.
[https ://www.gov.uk/government/statistics/influenza-in-the-uk-annualepidemiological-report-winter- 2025 -to- 2026 /influenza-in-the-uk-annualepidemiological-report-winter-2025-to-2026] (2026年7月6日閲覧)

2026年9月  菅谷憲夫