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構音障害

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-12
川崎聡大 (東北大学大学院教育学研究科人間発達臨床科学講座発達障害学准教授)
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  • ■疾患メモ

    構音障害には,発声発語器官の問題によって結果的に共鳴や構音に異常を来たす器質性構音障害と,幼児期の構音獲得過程で生じる機能性構音障害がある。

    器質性構音障害は,共鳴の異常や口腔内圧を十分に高められないために,異常な代償パターンによる誤った構音の状態が習慣化したものである。

    機能性構音障害は,構音運動を学習する際に誤った構音運動パターンを学習し,定着したものである。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    発音(誤り構音)の様子(特徴):特定の音が置き換わる「置換」や一部の音素の「省略」,音の「歪」,「付加」の4つに分類することができる。

    共鳴に関わる構音の問題では声門破裂音,咽頭摩擦音,咽頭破裂音などがある。

    機能性構音障害の場合は前者で特定の音素で生じることが多く,後者や鼻咽腔構音が確認できる場合は器質性構音障害である可能性が高い。

    【検査所見】

    〈機能性構音障害〉

    機能性構音障害と幼児構音との鑑別(構音の発達)

    構音は3~4歳で歯茎破裂音(タ・ダ),4~5歳で軟口蓋破裂音(カ・ガ),5歳後半で歯茎摩擦音(サ)の順に発達する。一般的に構音完成時期は,ラ行を除いて5歳後半から6歳であり,これより前の段階であれば幼児構音(いわゆる発達途上に生じる不明瞭さ)と鑑別がつかない。逆に、この構音完成時期を過ぎて明らかな構音の問題が生じている場合は,要治療となる。

    機能性構音障害の場合,最も頻度の高いサ行で/s/が/t/に置換しているような場合(ex「さかな」⇒「たかな」),適切な言語指導を受ければ構音の問題だけであれば,3カ月程度で症状は改善する(知的発達の段階にも影響)。

    指導開始時期:器質性構音障害と異なり,機能性構音障害の場合は5歳までは通常介入せずに経過観察とし,6歳代での介入が望ましい。5歳代で介入を行う場合は当事者が自分の誤った発音に気づいている場合(自分の発音を気にしているかどうか)に言語訓練開始とする。

    〈器質性構音障害〉

    器質性構音障害を引き起こす症候は,先天性では口唇口蓋裂が最も頻度が高く(日本人で約1/500~600),後天性では口腔癌や舌癌が該当する。

    一見,口蓋裂がなくとも粘膜下口蓋裂(submucous cleft palate:SMCP)や先天性鼻咽腔閉鎖機能不全症(congenital velopharyngeal incompetence:CVPI)などによって,共鳴や構音に影響を及ぼすことがある。したがって,すべての構音障害で,鼻息鏡での呼気鼻漏出の確認をはじめ,発声発語器官の検査を行うことが望ましい。

    口唇口蓋裂の場合,構音(発音)や発声発語の問題だけでなく,新生児期より哺乳障害や顎発育障害を伴うことや,様々な要因で難聴のリスクも他児に比して高くなることなどから,新生児期から系統だった医療的介入が必要となる。

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