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片側顔面痙攣

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
安東由喜雄 (熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学分野教授)
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  • ■疾患メモ

    本症は日常診療の中ではさほど頻繁に遭遇することはないが,しばしばみられる神経疾患である。

    治療法が確立されてくるにつれ,本症の概念が確立され,新たな患者も発掘されてきている。これまで治療不可能と思われていた患者も薬物治療に加えて,ボツリヌス毒素治療,神経血管減圧手術などにより完治するケースもみられるようになってきた。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    顔面神経の被刺激亢進により,顔面神経支配領域の筋群が発作性,反復性に不随意に収縮する。片側の眼の周囲,特に下眼瞼部筋から始まり,しだいに頬部筋,口輪筋,広頸筋などの顔面神経支配筋群全体が同期して痙攣するようになっていく1)

    痙攣が一側の顔全体に広がると,「片眼が開けられない」「顔が引きつってゆがむ」といった状態に陥ったり,痙攣の振動が内耳に伝わって耳鳴りが生じるケースもみられる。

    本症は顔面筋の随意の収縮や,高血圧,脂質異常症,疲労,精神的な緊張などで増悪する。仰臥位やアルコール摂取で軽減することがある2)

    中年期以降の女性に発症することが多いが,数%は30歳以前にも発症することがある。多くは片側性であるが,両側性のものも数%ある。

    本症の原因としては,顔面神経根出口領域での血管圧迫説が有力であり,それに対し手術が有効である場合がある。

    【検査所見】

    顔面神経支配領域の筋群の詳細な神経学的診察が重要である。

    誘発筋電図で,顔面神経の分枝を刺激すると異常反応(lateral spread)が患側のみに認められる。

    神経血管減圧術では術後聴覚障害を呈することがあるので,聴性脳幹反応の術中のモニタリングが有用である。

    顔面神経根出口領域で圧迫を受けている血管は後下小脳動脈,椎骨動脈などであるため,MRIやMRAにより血管圧迫を同定できることがある。また,神経と血管との位置関係を明らかにするため,3D-MRIが有用である。MR-CISS(constructive interference in steady state)法がより病巣の描出に有用である場合もある。

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