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群発頭痛

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-19
豊田元哉 (とよだ内科頭痛クリニック院長)
山口修平 (島根大学医学部内科学講座内科学第三教授)
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  • ■疾患メモ

    群発頭痛は,「国際頭痛分類第3版beta」(ICHD-3β)で「3.三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)」のサブ分類の「3.1群発頭痛」として分類される()。

    08_48_群発頭痛

    一定期間頭痛が群発することからこの頭痛名がつけられている。

    群発頭痛は人類最悪の痛みの1つといわれるほどの激痛発作を特徴としている。

    短時間持続の一側性頭痛に,流涙,角膜充血,鼻漏,発汗などの副交感神経系の自律神経症状を伴うことを特徴とする。

    痛みが激しいため安静にできず,発作中落ちつきなく動き回ることも特徴である。

    急性期治療はスマトリプタン皮下注か純酸素吸入を,予防療法はベラパミル,ステロイドを用いる。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    一側の眼窩部を中心としたきわめて強度な頭痛発作を特徴とする。眼窩部以外には側頭部,眼窩上部に起こりやすく,時には頸部や肩にまで拡大する症例もある。その他には歯(特に上臼歯),鼻,耳などにも痛みが起こることがある。頭痛の持続時間は15~180分間で,発作頻度は1回/2日~8回/日である。

    頭痛と同側に結膜充血,流涙,鼻閉,鼻漏,前額部および顔面の発汗・紅潮,縮瞳,眼瞼下垂および,または眼瞼浮腫など自律神経症状を伴う。自律神経症状のうち「前額部および顔面の紅潮」と「耳閉感」がICHD-3βで新たに加わったが,前者は皮膚の色の関係から日本人では認めにくく,後者の頻度は低い。

    群発期は1~2カ月で,1~2年ごとに同じ時期に起こる。

    群発頭痛患者は落ち着かない感じを伴い,歩き回り体を前後にゆするなどの不穏行動を起こすことがある。

    ほとんどの症例で痛みは一側性であるが,稀に疼痛側が発作ごとに左右交代する例がある。

    頭痛ピーク時の性状は「焼け火箸を目に突っ込まれたような」「眼球をえぐり取られるような」と表現されるほど重度~きわめて重度の痛みが持続性に起こる。激烈な痛みのため就寝中に覚醒することもよくあり,疼痛のみならず寝不足に悩まされることもある。

    群発頭痛は就寝中に起こることがよく知られており,実際に発作が起こる時間帯については夜間もしくは主に夜間に起こるものが半数近くである。片頭痛の場合は痛みで眼が覚めることは稀で,起床時に頭痛を認めるという点が群発頭痛と異なる。

    群発期における頭痛の誘発因子として,アルコール摂取,ヒスタミン,ニトログリセリンを含む薬剤の服用,揮発性物質,有機溶剤,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,体温上昇(入浴,高温,運動など)のほか,昼寝,息こらえなどの可能性が指摘されている。

    20~40歳代の男性で発症することが多く,男女比は2.5から3.5:1と言われているが,近年,女性例が増加傾向にあるという指摘がある。

    群発期が7日から1年間続き,発作が1カ月以上の寛解期で中断されるものは「反復性群発頭痛」であり,頭痛発作が1年を超えて発現し,寛解期がないか,あったとしても1カ月未満で終わるものは「慢性群発頭痛」と呼ばれている。

    【検査所見】

    群発頭痛に特異的な検査はなく,基本的には問診と診察所見で診断する。

    群発頭痛様の頭痛を呈する二次性頭痛としては脳動静脈奇形,側頭動脈炎,脳腫瘍(下垂体腫瘍,傍トルコ鞍髄膜腫,三叉神経鞘腫,脳底部の鼻蓋咽頭腫),上位頸椎髄膜腫,脳梗塞,脳動脈解離,脳動脈瘤(前交通動脈瘤,後交通動脈瘤,椎骨動脈瘤),急性歯髄炎,副鼻腔炎,眼窩筋炎などがあり,MRIなどで鑑別する。

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