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パーキンソン病

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  • ■治療の考え方

    PDの運動症状はPD治療薬によく反応するため,効果を評価しながら十分な量を使う。PD治療薬で動きを改善させつつ,リハビリテーションを十分に行うことが重要である。

    ■治療上の一般的注意&禁忌

    【注意】

    ドパミンアゴニスト(以下,アゴニスト)やレボドパ合剤は前兆のない突発性睡眠をきたすことがあるので,高所での作業や車の運転には注意を要する(特に非麦角系アゴニスト)。

    閉塞隅角緑内障の患者では,レボドパ合剤やトリヘキシフェニジルが眼圧を上昇させることがある。

    【禁忌】

    MAO-B(monoamine oxidase-B)阻害薬(セレギリン塩酸塩)では三環系抗うつ薬,選択的セロトニン再取り込み阻害薬,選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬との併用が禁忌である。

    ■典型的治療

    レボドパ合剤とアゴニストが中心となる。前者は効果が強いが短時間しか持続せず,後者は効果がレボドパ合剤より弱いが長時間作用する。

    長期的には運動合併症や精神症状(幻覚・錯視・妄想など)といった副作用が問題となる()。

    08_17_パーキンソン病


    一般に若年者はアゴニストで治療を開始するが,若年であってもアゴニストで十分に運動症状が改善しないなら,レボドパ合剤の使用を躊躇するべきではない。

    高齢者は最初からレボドパ合剤を中心に症状を改善させる。

    レボドパの効果を増強したり効果を延長したりする目的でMAO-B阻害薬やCOMT(catechol-O-methyl-transferase)阻害薬を併用する。

    以上は脳内のドパミン欠乏を補充する目的で使用する薬剤であるが,ドパミン系以外にも作用する薬剤としてゾニサミド,イストラデフィリン,アマンタジンがあり,さらに抗コリン薬のトリヘキシフェニジルがある。効果はレボドパ合剤やアゴニストと比べると弱いが,ウェアリングオフ,ジスキネジアの改善効果も期待して使用される。

    内服薬だけで治療が難しい患者には脳手術(深部脳刺激療法)を行うことがある。

    【若年者】

    ドパミンアゴニストで治療を開始し,効果を評価しながら漸増する。

    一手目:ミラペックス®LA0.375mg錠,1.5mg錠(プラミペキソール) 1日最大4.5mgまで 1日1回(朝食後),またはレキップ®CR2mg錠,8mg錠(ロピニロール) 1日最大16mgまで 1日1回(朝食後)

    二手目:〈一手目に追加〉メネシット®100mg配合錠(レボドパ100mg/カルビドパ10mg) 1回1錠 1日3回

    日常生活で大きな支障がある,職業を失う恐れがあるなど,症状改善を優先すべきときには年齢に関係なくレボドパで治療を開始する。

    一手目:メネシット®100mg配合錠(レボドパ100mg/カルビドパ10mg) 1回1錠 1日3回

    【高齢者(70~75歳以上)または認知症を合併している患者】

    運動合併症の予防よりも現在の症状の改善を優先させるため,また精神症状や眠気が出現しにくいように,レボドパ合剤で治療を開始する。

    一手目:メネシット®100mg配合錠(レボドパ100mg/カルビドパ10mg) 1回1錠 1日3回

    二手目:メネシット®100mg配合錠(レボドパ100mg/カルビドバ10mg),250mg配合錠(レボドパ250mg/カルビドバ25mg)を1日当たり450~600mg程度まで増量する(1日3回)

    高齢者でも必要に応じてアゴニストも併用するが,幻覚,眠気等の副作用発現に十分な注意が必要である。少量から開始し,ゆっくり増量する。

    ■偶発症・合併症への対応

    パーキンソン病治療薬の開始早期に出現しやすい副作用として嘔気がある。少量から開始し(たとえばレボドパ合剤なら1回当たり50mgから),1~2週間おきくらいのペースでゆっくり増量する,あるいは制吐薬としてドンペリドンを併用することでほとんどは対処可能である。

    メトクロプラミドはパーキンソニズムを悪化させうるので使用しない。また過去に強い消化器症状で断念したパーキンソン病治療薬でも,数年を経て再度使用すると問題なく内服できることもあるので,必ずしも禁忌と考える必要はない。

    運動合併症の発症を予防するためにも,基本的にレボドパ合剤は食後内服とする。空腹時内服に比べて食後内服では血中濃度の変化が穏やかになるためジスキネジアが出にくく,効果持続時間も延長する。

    ウェアリングオフに対して,レボドパ合剤は1日3~4回程度は使用し,アゴニストを開始・増量する。ジスキネジアが併存する場合は,ジスキネジアが出現する時間帯の前に服用するレボドパの1回量を減量すると,軽減させられる。ジスキネジアがない場合はMAO-B阻害薬を開始してもよい。COMT阻害薬,ゾニサミド,イストラデフィリンはジスキネジアを悪化させにくいので,ジスキネジアの有無に関係なく利用しやすい。

    ■非典型例への対応

    パーキンソン病治療薬が効かない場合は原因として,①規則正しい服薬ができていない,②実際は効いているが患者が改善を実感できていない,③パーキンソン病以外の病気である(多系統萎縮症,進行性核上性麻痺,血管性パーキンソン症候群など),などが考えられる。特に③は判断が難しいことが多く,神経内科医との相談が望ましい。

    ■高齢者への対応

    感染症や手術等で経口摂取が困難となったときでも,パーキンソン病治療薬は継続する。パーキンソン病治療薬の急激な減薬や中止は,悪性症候群や離脱症候群を引き起こす可能性がある。ロチゴチン貼付剤(ニュープロ®パッチ,2.25~18mgまで5種類)があるが,経口摂取不能になってから開始して急激に増量するのは,副作用の面から難しい。一時的な経口摂取不可能状態の患者には,悪性症候群予防としてレボドパの点滴製剤(ドパストン®)が利用できるが,効果持続時間は短く,運動症状の改善目的としては不向きである。

    点滴用量については,レボドパ以外の薬を使用している場合,レボドパ合剤換算量(LED)を算出し,内服しているレボドパ量に加える。この1日あたりのレボドパ合剤換算値から100mgあたりドパストン®50~100mgに換算し,1日量の点滴用量を算出する。1日2~3回にわけて,1回あたり2~3時間で投与する。なお,添付文書にある「通常成人1日量レボドパとして25~50mgを1~2回にわけて」という量では,まるで足りない。

    服薬を中止すると元来パーキンソン病治療薬で抑制していた運動症状(寡動や振戦)が悪化し,嚥下機能やADLが急激に悪化することがあるので注意する。

    ■ケアおよび在宅でのポイント

    規則正しい生活と内服が重要であり,特に認知症を合併している患者では家族による内服薬管理が望ましい。

    パーキンソン病では麻痺は生じないが,運動不足や加齢に由来する廃用性筋力低下をきたす可能性はある。自主的な運動や,介護保険を利用したリハビリテーションを行う。

    ■文献・参考資料

    【参考】

    ▶ パーキンソン病治療ガイドライン2011.

    [http://www.neurology-jp.org/guidelinem/parkinson.html]

    【執筆者】向井洋平(国立精神・神経医療研究センター病院神経内科)

    【執筆者】村田美穂(国立精神・神経医療研究センター病院神経内科診療部部長)

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