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自己免疫性膵炎

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-15
岡崎和一 (関西医科大学内科学第三講座主任教授)
内田一茂 (関西医科大学内科学第三講座講師)
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  • ■疾患メモ

    自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)とは,しばしば閉塞性黄疸で発症し,時に膵腫瘤を形成する特有の膵炎である。リンパ球と形質細胞の高度な浸潤と線維化を組織学的特徴とし,ステロイドに劇的に反応することを治療上の特徴とする膵炎である。

    わが国に多い1型AIPと欧米に多い2型AIPの2亜型に分類される。わが国においては,自己免疫性膵炎は1型AIPを指し,特定疾患として難病に指定されている。

    2011年の厚生労働省研究班の患者調査によれば,人口10万人あたり4.6人(有病率),約5800人の患者がいると推定されている。また,人口10万人あたり1.4人(罹患率),約1800人が毎年新規にAIPと診断されていると推定されている。

    1型AIPはIgG4関連疾患(IgG4-related disease)の膵病変であり,膵外病変として,涙腺・唾液腺炎,肺門リンパ節腫大,間質性肺炎,硬化性胆管炎,後腹膜線維症,尿細管間質性腎炎などが時に認められる。

    病理組織学的特徴は,著明なリンパ球・形質細胞浸潤,IgG4陽性形質細胞の浸潤,花筵状線維化(storiform fibrosis),閉塞性静脈炎であり,lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)とも称される。

    2型AIPは好中球上皮病変(granulocytic epithelial lesion:GEL)を特徴とし,idiopathic duct-centric chronic pancreatitis(IDCP)とも称され,1型AIPとは別の病態である。

    ■代表的症状・検査所見1)2)

    【症状】

    1型AIPに特異的な症状はない。腹痛は無~軽度であり,閉塞性黄疸,糖尿病症状,随伴する膵外病変による症状を呈することが多い。無症状のため,腹部超音波検査における膵腫大が発見のきっかけになることもしばしばある。

    2型AIPでは腹痛が多く,しばしば急性膵炎を伴うとされる。

    【検査所見】

    血液検査:血中膵酵素,肝・胆道系酵素,総ビリルビン,IgG,IgG4の上昇や非特異的自己抗体(抗核抗体,リウマトイド因子など)がしばしば認められる。

    1型AIPでは血中IgG4高値が単独で最も診断価値が高いが,他の良性疾患(アトピー,喘息,類天疱瘡など)や時に膵癌でも上昇することもあるため,必ずしもAIPに特異的ではない点に注意を要する。

    腹部超音波(US),CT,MRI:ソーセージ様を呈する膵のびまん性腫大はAIPに特異性の高い所見であるが,限局性腫大は膵癌との鑑別診断を要する。また,ダイナミックCT,MRIでは,遅延性増強パターンが特徴であり,病変辺縁部の強い線維化を反映する被膜様構造は特異度が高く,AIPである可能性が高い。

    MRCP:主膵管狭細像の正確な評価はできないが,スキップ病変を認める場合や膵管が描出されない場合は,本症の可能性がある。

    PET,シンチグラム:保険の制約があるものの,病変部位にGa-67やFDGの異常集積を認め,ステロイド治療後に速やかに消失することが多い。

    ERCP:特徴的な膵管狭細像が主膵管にびまん性,あるいは限局性に認められる。またIgG4関連硬化性胆管炎の合併を示唆する胆管狭窄を伴うことがしばしばみられる。

    AIPは組織像から診断することも可能であるが,超音波内視鏡下針生検(EUS-FNA)による小さいサンプルでの診断は難しいことが多い。

    診断は,国際コンセンサス診断基準または自己免疫性膵炎臨床診断基準2011による。

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