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非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
橋本悦子 (東京女子医科大学消化器病センター消化器内科教授)
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  • ■疾患メモ

    非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)は,画像診断あるいは組織診断で脂肪肝を認め,アルコール性肝障害などのほかの肝疾患を除外した病態である。

    エタノール換算で男性30g/日(日本酒1合,ビール中瓶1本に相当),女性20g/日以上の飲酒量でアルコール性肝障害を発症しうるので,NAFLDの飲酒量はそれ未満となる。

    NAFLDは,主にインスリン抵抗性を基盤に発症する。また,メタボリック症候群の発症危険因子でもあり,全身疾患としてとらえる必要がある。

    NAFLDは,病態がほとんど進行しないと考えられる非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL)と,肝組織でsteatohepatitisを呈し,進行性で肝硬変や肝癌の発症母地になりうる非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)に病理学的に分類される(図1)。

    06_07_非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

    NASH診断は簡便でなく,NAFLDとして診療することが多い。

    わが国でのNAFLDの頻度は,成人健康診断受診者の20~30%,肝硬変の成因では約4%,肝細胞癌では約2%で,増加傾向である。

    NALFDの疾患概念は単一の病因を反映するものではなく,複数の病態を包含している。病因としてインスリン抵抗性をきたす内分泌疾患(下垂体機能低下症,成長ホルモン分泌不全症,甲状腺機能低下症など),睡眠時無呼吸症候群,高度の低栄養(短腸症候群など),薬物性肝障害(アミオダロン,メトトレキサート,タモキシフェン,ステロイドなど),膵頭十二指腸切除術後などが挙げられる。これらを二次性NAFLDと呼ぶ。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    非代償期の肝硬変に進行するまで,自覚症状はないことが多い。

    予後:線維化進行例を除き,肥満例では減量により治癒する。

    他の病因による肝硬変と同様に,進行すると,黄疸,腹水,肝性昏睡などの肝不全症状を呈する。

    生命予後:NAFLDでは一般住民に比較して,心血管イベントや肝関連死によりstandardized mortality ratioが約1.5倍となる。

    肝硬変では,5年肝癌発癌率は約10%,5年生存率は約75%で,死因は肝関連死が約80%である。

    【検査所見】

    脂肪肝の血液診断マーカーはない。

    脂肪肝は,画像検査あるいは病理組織で診断する。

    腹部超音波は簡便かつ安価でスクリーニング検査に有用である。

    CT,MRI,MRスペクトロスコピーでは脂肪肝を数値で診断することができる。

    血液検査ではAST・ALTの上昇は軽度で,AST<ALTが特徴であるが,線維化が進行して肝硬変になるとAST>ALTとなる。また,AST・ALTともに正常であることもあり,注意を要する。γ-GTPは軽度の上昇にとどまる。

    血小板数の低下,ヒアルロン酸,Ⅳ型コラーゲン・7Sなど線維化マーカーの上昇は線維化進行の指標である。

    肝線維化進展予測のスコアリングシステムとしてはNAFLD fibrosis score1)やFIB4 index 2)が有用である。

    インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRが高値となる。糖代謝異常,脂質異常を示す症例が多い。

    *:空腹時血糖(mg/dL)×IRI(μU/mL)/405

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