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骨盤外傷

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
岡 智 (東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター)
大友康裕 (東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センターセンター長)
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  • ■治療の考え方

    骨盤外傷は出血性ショックを伴うことが多いため,循環動態が不安定な場合には早期に骨盤輪の固定と損傷血管の止血処置を行う。

    その後,合併損傷としての直腸,尿路,生殖器などの直接損傷や骨盤輪後方損傷による神経障害である下肢機能障害や膀胱直腸障害などの治療を行う。

    ■病歴聴取のポイント

    多発外傷を伴うことが多く初診時に問診できない場合があり,注意深い視診,触診が必要となる。

    受傷機転や外力の方向などを聴取することで,骨折型が推定できる。

    臨床所見の観察が不十分であると直腸肛門損傷,生殖器損傷,膀胱損傷,神経損傷などの合併損傷を見落とす可能性がある。

    高齢者の場合,カテコールアミンへの反応低下により出血性ショックをきたしても,頻脈,冷汗などの症状が出現しない場合がある。また,動脈硬化により血圧が低くなくてもショック状態に陥っている場合がある。

    心疾患などの既往がある場合は,降圧薬,β遮断薬やジギタリス製剤の服用により頻脈にならないことや,抗凝固薬や抗血小板薬の内服により出血が助長されることもあるため,本人や家族に既往歴や内服薬の確認を行っておくことは重要である。

    ■バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    出血性ショックを伴えば,血圧低下,頻脈,冷汗,末梢冷感,不穏などの徴候が出現する。

    外表上の徴候がなくても大量出血が発生していることがあるため,骨盤X線撮影を行って確認する必要がある。

    【身体診察】

    骨盤周囲の打撲痕,局所の皮下出血だけでなく,下肢の異常肢位や下肢長差の存在により疑うことができる。触診による骨盤部の圧痛や可動時痛,恥骨結合の開大なども強く疑う所見である。ただし,骨盤部の触診は,出血を助長する危険があるため,骨盤X線で骨折が明らかな場合には実施を控える。

    会陰部損傷を伴えば尿道・膀胱損傷に伴う血尿や尿閉,仙骨損傷による神経損傷を伴えば肛門括約筋弛緩,会陰感覚障害,下肢神経障害などが起こりうる。合併損傷を見逃さないために会陰周囲の視診や直腸診を行い,必要に応じて下部尿路の造影検査を行う。仙骨骨折を伴えば,下肢の神経学的所見を確認する。

    背面観察において,ログロール(log roll)は禁忌である。人員を確保し,フラットリフトを行い観察する。

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