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呼吸困難

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-12
櫻井 淳 (日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野准教授)
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  • ■治療の考え方

    呼吸困難をきたす疾患は,肺や心臓以外にも腹部,精神的,代謝・内分泌,感染,外傷,血液疾患,神経筋疾患と様々な原因がありうる。

    呼吸は生命維持に重要であるため,急性の呼吸困難の主訴に対しては緊急度に合わせて治療を先行させるかどうか判断することが最も大切である。

    上気道閉塞,意識障害,呼吸停止,下顎呼吸,チアノーゼ,ショック,低酸素による徐脈を呈したらすぐに蘇生を開始する。

    SpO2等の酸素化の指標やバイタルサインで初期評価を行い,緊急度・重症度が高そうであれば酸素投与,静脈路確保,モニタリングを開始する。

    時間的余裕があると判断できたら病歴や理学的所見をとり,検査を進める。

    ■病歴聴取のポイント

    【発症様式】

    発症様式が突然なのか,どの程度時間が経過しているかを確認することが大切である。

    突然発症:安静時の突然発症は,急性肺動脈血栓塞栓症や自然気胸を疑わせる。パニック障害などの精神的な問題による呼吸苦も突然発症し不安を伴う。食事中の突然発症は窒息・誤嚥も疑う。薬剤投与後に突然発症し発赤・浮腫を伴えばアナフィラキシーを疑う。

    数時間かけて発症:うっ血性心不全,気管支喘息等を疑う。

    数日かけて発症:肺炎等を疑う。

    慢性の経過:慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD),肺線維症,貧血,神経筋疾患,肥満,腹水,慢性心不全,悪性腫瘍関連等を疑う。

    【病歴・随伴症状】

    呼吸困難で吸気性,呼気性,労作性,夜間に発作的に起きているか,外傷後の出現か等の状態を確認する。また,熱発,咳嗽(乾性,湿性),胸痛,咽頭痛,筋力低下等の随伴症状の確認が必要である。

    胸部外傷後に呼吸困難を訴えれば肋骨骨折,気胸,肺挫傷,フレイルチェスト,血胸等が疑われる。

    咳嗽,排痰,熱発が先行していれば肺炎等の感染性疾患が考えられる。

    臥位になると起こる呼吸困難を起坐呼吸と呼ぶ。通常は左心不全,COPDでみられる。神経筋疾患による横隔膜の衰弱の初期症状の1つとして起坐呼吸がみられることがある。夜寝ている最中に起きて起坐呼吸となるのは発作性夜間呼吸困難であり,通常は左心不全を疑わせるが,COPDでもみられる。

    胸痛とともに発症する呼吸困難において,持続性で鈍い内臓痛では心筋梗塞,肺血栓塞栓症が疑われる。痛みが鋭く深呼吸で増悪し,体動で増悪しないなら胸膜炎や自然気胸が考えられる。

    労作時の呼吸困難は通常はCOPDと関連があるが,低心機能症例や肥満,妊娠,腹水等による腹部からの横隔膜圧迫でも生じる。

    ■バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    呼吸数や呼吸様式を観察することが大切である。呼吸困難時に必ずしも呼吸数や呼吸様式に異常を認めるとは限らない。

    呼吸数や呼吸様式と他のバイタルとも組み合わせて緊急度を判断する。意識障害をきたす呼吸困難は重症と考えて診療を行う。

    【身体診察】

    呼吸状態より,奇異呼吸,陥没呼吸,tracheal tug(上気道閉塞),呼気延長(気管支喘息),吸気延長(上気道閉塞)を観察する。

    身体所見として肺雑音の有無,頸静脈怒張(心不全,心タンポナーデ,緊張性気胸),ばち指(慢性経過を示唆),浮腫(心不全,腎不全),下肢の腫脹(血栓性静脈炎からの肺血栓塞栓症)を観察する。

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