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春の喜び~仲間の栄転と2018年度診療報酬改定(2018年4月6日)

登録日:
2018-04-06
最終更新日:
2018-04-06

すぎうら医院に在宅診療部を設立してから4月1日で丸5年が経過しました。
これまで在宅診療部部長だった中山真美先生は、在宅診療における栄養管理の研究と臨床実績が評価され、4月から島根県立大学看護栄養学部教授として栄転されました。仲間から教授を輩出できたことは、我々として大変名誉なことです。

中山先生(左)と僕

在宅診療部創設時には訪問診療専任医1名と、外来と訪問を兼任する僕の2名体制でしたが、現在は訪問診療専任医2名、外来と訪問を兼任する医師2名で行っています。在宅診療部でともに働いた仲間には、教職に進まれた中山先生のほかに、新規に開業された先生が3名、父上のクリニックを継承された方1名がいらっしゃいます。今でもこの先生方と輪番を組み、夜間休日の緊急訪問体制を整えています。お互いの力量がよく分かっているので、自分の患者さんを安心して任せています。

■5年前と現在の在宅緩和ケアを受ける患者さんの違い

在宅診療を始めた当時、市内の病院からご紹介いただくがん患者さんは「在宅での看取り」を希望されるケースがほとんどでした。がんの治療で数カ月入院した後、余命が数日と分かった時に退院が検討され、数日間在宅で過ごされた後にお看取りとなっていたのです。緩和ケア医として僕たちは在宅での麻薬の使用、栄養管理、胸水、腹水の管理など貴重な経験をたくさんさせていただきました。何よりも在宅で看取るための十分な医師の当番体制を築くことができました。

それから5年が経った今は、紹介のタイミングが変わってきました。最終的な抗がん剤の効果が見込まれなくなった時から訪問診療医にお声がかかるようになったのです。5年前は退院からお看取りまでの期間はわずか数日間だったため、患者さんとのお付き合いはなかったのですが、最近は患者さんと関わらせていただく期間が数カ月から、場合によっては2年以上と長くなってきました。この間、訪問看護師、訪問歯科医、管理栄養士、訪問薬剤師、療法士といった多職種の協力を得ながら手厚く加療できるのです。

それによって意外なことに、在宅で亡くなる方が減り、短期間の入院先で亡くなる方が多くなったのです。家庭で十分な療養ができたので本人も家族も「何が何でも最期は家で」という気持ちが薄らぐのかもしれません。あるいは、家庭に療養場所としての環境が整えられているので、しばらく入院で体調を整えて、また家で過ごそうという気持ちになるのかもしれません。 

■2018年度診療報酬改定に反映された

在宅緩和ケアによって、患者さんが自宅で穏やかに過ごせることができれば、最期を迎える場所にはこだわらなくなるのかもしれない―。そう感じていた矢先、2018年度診療報酬改定で驚くべき改定がありました。

看取りの評価が変更され、「6カ月以上の訪問診療を実施した患者の場合は、入院受け入れ先で死亡した場合7日以内であれば、在宅における看取り実績に含まれる」とされたのです。きっと、厚労省担当課、診療報酬改定に関わる先生方が、在宅診療医の現場の意見を聞き入れて下さったのだと、熱く思いました。

*過去の記事は➡コチラでご覧いただけます。

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