株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

Q1 在宅医療とは

登録日:
2018-04-06
最終更新日:
2018-06-22

最近,「在宅医療」という言葉を新聞や週刊誌でもよく目にしますが,これは往診のことを指すのでしょうか?

point

▶在宅医療は,入院医療,外来医療に次ぐ第三の医療と言われている。
▶在宅医療は,自宅や高齢者住宅などの生活の場で繰り広げられる医療のことで,医師だけでなく,歯科医師,看護師,薬剤師,リハ専門職,管理栄養士等,医療専門職が訪問して医療サービスを提供する。医師の往診だけを意味するものではない。
▶病院の機能が地域に拡がったと考えると理解しやすいが,そこで提供される医療の質や目的は大きく異なる。

1 在宅医療推進の背景

古くから患者や家族の要請で医師による往診は行われていたが,急性疾患への一時的な対応にすぎなかった。居宅が医療提供の場として制度上認められたのは1992年のことで,その背景には,人口構造の変化に伴う疾病構造の変化,慢性疾患の増加があった。さらに,医療技術の目覚ましい発展によって,従来救命できなかった病態でも命をつなぐことが可能となった一方で,何らかの医療的ケアを必要とする療養者も増加傾向となった。従来このような病態の療養者は,病院や施設で生活することが一般的だったが,いわゆるノーマライゼーションの思想の普及や,脱施設化などの社会規範の変化によって,住み慣れた地域,あるいは自宅で療養する重要性が認識されはじめた。
一方で,増加の一途をたどる認知症など高齢者の生活課題をも,入院医療によって解決しようとした社会的風潮も根強く残り,いわゆる社会的入院への解決方策としても,居宅における医療,すなわち在宅医療の普及推進が国家的方策となった。

2 在宅医療の概念

在宅医療とは,「自宅で行われる医療」と理解される傾向があるが,今後は単身者の増加や認知症の増加によって,自宅で安全な生活を継続することが困難な場合も予想される。そこで,グループホームやサービス付き高齢者向け住宅なども含めた「暮らしの場での医療」と考えるとよい。したがって,「生活の場に,医療専門職が訪問して提供する医療」と考える。
さらに提供される医療は,患者(利用者)やその家族の意向を汲んだ全人的・包括的な医療であって,疾病治癒や救急救命をめざす病院医療とは性格を異にするが,急性疾患や外傷などに対して在宅で治療を継続することも可能である。また,望まれれば看取りにまで関わることとなり,「人生を丸ごと支える医療」と言っても過言ではない。

3 在宅医療の対象者

介護保険制度によって市民権を得たこともあって,在宅医療=高齢者医療と考えられる傾向があるが,その対象は医療的ケアを必要とする小児や障害者,神経筋難病患者,がん末期患者なども含めた,機動力ある医療サービスをもとめる療養者である。

4 在宅医療継続の3要素と地域包括ケアシステム

在宅医療を継続するためには,病態に応じた介護力,看護力,療養環境が重要と言えるが,在宅で療養したいと願う療養者自身の明確な意思,意欲が前提条件であることが望ましい。さらに,多職種協働,地域連携,24時間365日の切れ目のないサービスによって支えられる。換言すると地域包括ケアシステムがしっかりと機能することが大切と言える(→「Q23〜33」参照)。

太田秀樹

このコンテンツは書籍購入者限定コンテンツです。

Webコンテンツサービスについて

ログインした状態でないとご利用いただけません ログイン画面へ
新規会員登録・シリアル登録の手順を知りたい 登録説明画面へ
本コンテンツ以外のWebコンテンツや電子書籍を知りたい コンテンツ一覧へ

関連記事・論文

もっと見る

page top