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不妊治療と甲状腺【特に生殖補助医療では甲状腺評価が重要】

No.4906 (2018年05月05日発行) P.51

盛崎瑞葉 (慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科)

小林佐紀子 (慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科特任講師)

伊藤 裕 (慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科教授)

登録日: 2018-05-03

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近年,不妊治療における甲状腺のマネージメントが注目されている。これまでFT4低値かつTSH高値である顕性甲状腺機能低下症と,不妊や流産との関連が示されていたが,FT4正常でTSH高値の潜在性甲状腺機能低下症や甲状腺機能が正常で抗TPO抗体陽性の場合は,それらとの関連を示唆する報告があるものの明らかではなかった。

2017年に改訂された米国甲状腺学会の「妊娠中および分娩後における甲状腺疾患の診断と治療に関するガイドライン」1)では,挙児希望があり顕性甲状腺機能低下症を認める女性に対しては,体外受精や顕微授精などの生殖補助医療の有無によらず甲状腺ホルモン製剤投与による甲状腺機能の正常化が推奨されている。潜在性甲状腺機能低下症の女性に対しては,生殖補助医療を行う場合はTSH<2.5mU/Lを目標に甲状腺ホルモン製剤投与が推奨されており,生殖補助医療を行わない場合は,妊娠成立後の甲状腺機能低下症の進行を防ぐ目的で少量の投与(25~50μg/日)が考慮されうるとされている。さらに,抗TPO抗体陽性で甲状腺機能が正常の女性は,生殖補助医療を行わない場合,甲状腺ホルモン製剤投与は推奨されないが,生殖補助医療を受ける場合は少量の甲状腺ホルモン製剤投与を考慮してもよいとされている。

不妊治療,特に生殖補助医療を行うにあたって,甲状腺機能や甲状腺自己抗体を評価することは重要であると考えられ,今後も甲状腺ホルモン治療の適応に関して新たな知見が注目される。

【文献】

1) Alexander EK, et al:Thyroid. 2017;27(3):315-89.

【解説】

盛崎瑞葉*1,小林佐紀子*2,伊藤 裕*3  *1慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科 *2同特任講師 *3同教授

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