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そこに住まうことの魅力[お茶の水だより]

No.4882 (2017年11月18日発行) P.17

登録日: 2017-11-16

最終更新日: 2017-11-16

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▶地元出身者が地元の医学部に入り、同じ大学で研修を受けて、そのまま地元に定着して診療に従事する。そんなキャリアコースを推進しようと、国はあの手この手を打ち出しているように見える。
▶来年4月から始まる第7次医療計画では、医学部地域枠の入学者は原則として地元出身者に限定される。地域枠出身者の臨床研修先については、大学所在都道府県と同じにすることを原則化。確実に地域の病院で研修できるよう、地域枠のマッチングを一般枠と分ける案も検討中だ。厚生労働省は、医師不足県の知事が大学に「地元出身者枠」の設置を要請可能とする仕組みも示している。
▶世界保健機関(WHO)は過疎地域で有効な医師確保対策として、地域医療への“早期曝露”を推奨している。来年度以降の医学部カリキュラムに反映される「モデル・コア・カリキュラム」(コアカリ)改訂版では、地域医療実習が大幅拡充された。地域定着へのさらなる後押し効果も期待できよう。
▶実習を通じて医療の面白さに目覚め、地域医療マインドを持った医師が増えれば万々歳だ。しかし、果たして地方には、学生に東京進学を思いとどまらせ、研修後も留めておける魅力と活力があるだろうか。増える高齢者、閉じる商店、没個性化した郊外の風景。「地方消滅」を嗅ぎ取った若年層は都市部あるいは東京へ流出し続けている。
▶地元に定着するとは、そこに住まうことだ。観光地が栄えても、当地の生活に魅力がなければ、医師に限らず若者の流出は止まらない。コアカリ改訂に伴い、診療所や中小病院で実習する学生の増加も予想される。地元を知る医師が住人視点で地域の魅力を再発見し、医学生や医師を志す子供たちに発信することがますます重要になるだろう。

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