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(2)前立腺肥大症の薬物治療 [特集:前立腺肥大症治療の現状と展望]

No.4786 (2016年01月16日発行) P.27

舛森直哉 (札幌医科大学医学部泌尿器科学講座教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-30

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  • 前立腺肥大症(BPH)の薬物治療の第一選択薬はα1遮断薬である

    前立腺が大きいなど,症状・所見が重症の場合はα1遮断薬の長期成績は期待できない

    前立腺が大きい症例で良好な長期成績を期待したい場合,5α還元酵素阻害薬を使用・併用する

    ホスホジエステラーゼ5阻害薬は,BPHの薬物治療のもう1つの第一選択薬となる可能性がある

    α1遮断薬によりBPHに合併する過活動膀胱症状の改善が不良な場合,抗コリン薬を慎重に併用する

    1. 薬物治療の適応となる前立腺肥大症とは

    前立腺肥大症(良性前立腺過形成,benign prostatic hyperplasia:BPH)は,本来,病理組織学的所見を示す用語であり,尿道の近傍に存在する移行領域に発生する良性腺腫を表す。典型的なBPHでは,腺腫の増大による前立腺部尿道の機械的閉塞と,平滑筋細胞上に存在する交感神経α1受容体の刺激による機能的閉塞により膀胱出口部閉塞(bladder outlet obstruction:BOO)と下部尿路機能障害(lower urinary tract dysfunction:LUTD)を呈する。また,合併する,あるいは,BOOに続発する膀胱排尿筋の変化(排尿筋過活動や排尿筋低活動)とLUTDが相まって,種々の程度の下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)が出現する。
    LUTSがQOL(quality of life,生活の質)に及ぼす影響は人によって様々であり,たとえば,夜間排尿回数が1回であってもこれを苦痛と感じる人がいる一方,3回でも平気だという人もいる。「前立腺肥大症診療ガイドライン」(以下,ガイドライン)1)にも示されているように,QOL疾患であるBPHでは,患者から治療の希望を聴取することが大切である。すなわち,LUTSによってどの程度患者が困っているのか,これによってどの程度QOLが障害されているのかを評価することが,治療適応・治療方法決定のためには重要である。
    一方で,低い頻度ながら,BPHによるLUTDにより,水腎症,腎後性腎不全,膀胱結石などを合併することがある。この場合は,患者の訴えるLUTSの重症度にかかわらず,医学的治療(通常は外科治療)が必要である。
    BPHの治療法には薬物治療と外科治療がある。治療の有効性と侵襲性のバランスに関しては,外科治療が薬物治療より圧倒的に有効であり,逆に薬物治療は外科治療より圧倒的に非侵襲的である。腎後性腎不全などの医学的治療の必要性がある場合は,不良な全身状態などの手術に関するリスクが低ければ,最も治療効果の高い外科治療が選択される。一方,そのほかの症例では,初回治療として薬物治療が選択される場合が多いのは事実である。
    いずれにしても,QOL障害の程度と患者が期待する治療効果とを評価し,効果発現の時期,効果の程度,副作用,侵襲性,費用,長期成績に関する薬物治療と外科治療の利点と欠点を説明した上で,最善な治療方法とその時期を決定することになる。

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