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(難治性)口内炎 × 半夏瀉心湯[漢方スッキリ方程式(5)]

No.4868 (2017年08月12日発行) P.46

米永一理 (十和田市立中央病院総合内科/東京大学医学部非常勤講師/日本大学歯学部兼任講師)

登録日: 2017-08-14

最終更新日: 2017-08-07

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 半夏瀉心湯は,もともとは胃腸炎の薬でもあり,生体内の粘膜の状態を整えてくれる。口内炎を含む腸管炎は,粘膜が荒地になった状態であり,半夏瀉心湯はそこに芝生を生やして補水してくれるイメージである。

 半夏瀉心湯の薬効を得るためには,全身投与だけでなく,局所に薬が行き渡ることが大事とされている1)。作用機序も解明が進んでおり,①抗炎症作用としてプロスタグランジンE2の産生を抑制2),②口内炎の起因となるフリーラジカルを除去3),③鎮痛作用や抗菌作用4)―など様々な作用が報告されている。

 口内炎においては,有効な薬効を得るために含嗽を適宜行うことが重要となる。漢方薬は溶解しにくいため,含嗽薬を作るにはお湯で溶かす必要がある。具体的には,1日に1回,図の手順で作ることを勧めている5)。これであれば,外出先にも持っていくことができ,疼痛がある時に適宜使用できる。特にリスクがない方の場合,外出先などで吐き出すことができない時は適宜飲み込みも可としておくと使用しやすい。

含嗽薬なら自己調節に任せられる

含嗽薬の使用頻度は,疼痛などの症状に合わせて増減してよい。1日3包を目安とするが,飲み込みをしない場合は上限なく使用してもよい。つまり患者の自己調節に任せることができる。止め時は,口内炎症状が治まり,患者が含嗽を次第にしなくなってきた時である。

 含嗽時の注意点として,口内炎がひどい場合,含嗽当初はピリピリとした感じを訴えることがある。このような場合は3~4日ほど使用を継続していると症状が軽快してくることが多い。ピリピリ感が強い場合は,慣れるまで溶解濃度を調節するとよい。また,半夏瀉心湯は甘草を含むため,内服により,副作用として偽アルドステロン症になることがあり,血圧の上昇や下肢の浮腫を経験することがある。よって,服薬が増えることを嫌う高齢者には,含嗽のみの使用を勧める。

 応用的な使用方法として,急性に発症した口内炎においては,急性症状が落ち着くまで含み飲みがよい。さらに含み飲みでも効果不十分な場合は,黄連解毒湯の内服を合わせるとよい。この際,黄連解毒湯は特に含嗽する必要はなく,内服だけでよい。

まとめ

口内炎にはまずは半夏瀉心湯の含嗽(ブクブク)

効果不十分例では含み飲み(ブクブク,ゴックン)

さらに効果不十分の際には黄連解毒湯内服(ゴックン)を併用する


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