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CASE17 意識障害と高カルシウム血症/嘔気,全身倦怠感から意識障害が出現した72歳男性[CAUTION!臨床検査の落とし穴]

No.4692 (2014年03月29日発行) P.63

髙谷季穂 (大津市民病院総合内科医長)

髙見史朗 (大津市民病院総合内科部長)

片岡慶正 (大津市民病院病院長)

登録日: 2014-03-22

最終更新日: 2017-07-31

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  • 【症例紹介】

    72歳の男性。既往歴に大腸癌術後,両側副腎腺腫を指摘されており,泌尿器科にて手術予定であった。その他,高血圧症のため近医に通院していた。2月頃より嘔気が慢性的に出現し,3月下旬より全身倦怠感が増悪してきた。4月初旬からは寝込むことが多くなり,立つことも困難になっていた。4月8日に内科受診し,血液検査の結果,高カルシウム血症を認めた(表1)。また呼吸苦の訴えはなかったものの,胸部X線写真上両側下肺野にすりガラス陰影を認め,SpO2の低下も伴っていたため入院となった。


    検査値のどこに悩んだか

    本例は高カルシウム血症を認めたが,その原因の鑑別診断として,カルシウム製剤やvitD製剤の内服歴はなかった。またintact-PTHの上昇も認めず,副甲状腺機能亢進症の可能性に関しても否定的であった。悪性疾患に伴う高カルシウム血症を疑ったが,画像診断では明らかな悪性所見を認めず,また腫瘍マーカーも正常範囲内であった。しかし大腸癌の既往歴や,肺・頭頸部の扁平上皮癌,腎細胞癌,乳癌などの悪性腫瘍に合併する高カルシウム血症の場合に,腫瘍細胞から産生されるPTHrPの上昇を認めていることなどからも,悪性疾患の可能性を捨てきれなかった。意識障害が進行し,診断がつくまでに高カルシウム血症の治療を開始せざるを得なかったが,血液検査上LDHの上昇と血小板減少,sIL-2Rの上昇を認め,腎腫大,肝腫大も指摘されていたことから,血液疾患を疑った。

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