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CASE04 脂質異常症とCK高値/検診で脂質異常症を指摘され,脂質治療前からCKが高値であった45歳女性[CAUTION! 臨床検査値の落とし穴]

No.4692 (2014年03月29日発行) P.18

五十嵐雅彦 (山形市立病院済生館糖尿病内分泌内科兼地域糖尿病センター科長兼室長)

登録日: 2014-03-22

最終更新日: 2017-07-31

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  • 【症例紹介】

    45歳の女性。事務職。既往歴は,35歳時に気管支喘息,ただし過去8年間は薬物治療をしていない。家族歴は特記すべきことはない。喫煙歴はないが,缶ビール(350mL)はほぼ毎晩摂取する。1月31日の検診で脂質異常症と肝機能障害,脂肪肝を指摘され,2月20日に精査のため当院内科外来を受診した。検診のデータでは,身長161.6cm,体重68.0kg(ただし,昨年の検診時は64.9kg),腹囲89.5cm,血圧120/74mmHg,脈拍64/分。血液生化学検査は,白血球6120/μL,赤血球412×104/μL,血色素12.3g/dL,ヘマトクリット38.4%,血小板30.7×104/μL,AST 48IU/L,ALT 60IU/L,γ-GTP 113IU/L,ALP 310IU/L,空腹時血糖(FPG)93mg/dL,総コレステロール(T-Cho)307mg/dL,中性脂肪(TG)310mg/dL,HDL-コレステロール(HDL-C)61mg/dL,LDL-コレステロール(LDL-C)220mg/dLであった。尿検査では異常所見はなく,心電図は正常範囲内で胸部X線と胃バリウム造影では異常所見はなかった。腹部超音波で脂肪肝と診断されていた。また,便潜血は陰性で,乳腺,甲状腺,子宮においても異常所見はなかった。当科受診時の問診では,特に困っているほどではないが,過去1年間の体重増加とともに最近数カ月間月経がないこと,歩くと下肢が疲れやすいとの訴えがあった。また,意識的に運動療法はこれまで行ったことはない。そこで,肝機能と脂質検査に加えCKも測定したところ,検査データでは脂質異常症,肝機能障害とともに,特に運動後ではなかったにもかかわらずCKが433IU/Lと高値を示した(表1)。

    検査値のどこに悩んだか

    受診時の採血結果からは,検診で指摘されたように脂質異常症と肝機能障害,脂肪肝であることは間違いない。しかし,特に運動する習慣がなく,また横紋筋融解を起こすような脂質異常症治療薬をまだ使用していないにもかかわらず,CKが高値を示していた。また,確かに連日のアルコール摂取による影響もありうるが,過去1年間の体重増加とともに閉経前の女性にもかかわらず最近数カ月間月経がないとの訴えにも引っかかりを感じ,単純にスーパースタチンによる脂質異常症の治療を開始してよいか迷った。

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