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CASE02 ストレス下での血漿コルチゾール値/来院当初,高コルチゾール血症を示した副腎皮質機能低下症の1例[CAUTION! 臨床検査値の落とし穴]

No.4692 (2014年03月29日発行) P.10

川村 実 (岩手県立中央病院総合診療科診療部長)

登録日: 2014-03-22

最終更新日: 2017-07-31

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  • 【症例紹介】

    52歳,男性。【主訴】低ナトリウム血症。【現病歴】41歳時に高血圧,脂質代謝異常症および心房細動を指摘され,以後近医で通院中であった。年に1~2回の定期採血検査では血清ナトリウム濃度の異常はなかった。入院2週間前に発熱して近医を受診したが,それ以後微熱が続き,浮遊感と食欲不振もあった。入院前日,再び近医を受診して採血検査を受けたところ,低ナトリウム血症(121mEq/L)を認めたため,翌日当科に紹介となり,即入院となった。【入院時現症】身長178.4cm,体重61.0kg,JCS(Japan Coma Scale) -1,血圧133/83mmHg,脈拍87/分,SpO2 98%(room air),皮膚乾燥なし,ツルゴール(皮膚緊満度)正常。【入院時検査所見】血液・尿検査の所見を表1に示す。低浸透圧性低ナトリウム血症であり,尿は高浸透圧を示し,尿ナトリウム濃度は20mEq/L以上を示した。内分泌検査は表2に示す。血漿中コルチゾールが異常高値を示した。甲状腺刺激ホルモン(thyroid-stimulating hormone;TSH)が低下していたが,甲状腺ホルモンは正常範囲内を示した。

         

    検査値のどこに悩んだか

    本例の検査結果からは抗利尿ホルモン分泌異常症(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone;SIADH)が最も考えられた。厚生労働省のSIADH診断基準(平成22年改訂版)の検査所見である①低ナトリウム血症(135mEq/L以下),②低浸透圧血症(280mOsm/kgH2O以下),③高張尿(300mOsm/kgH2O以上),④尿中ナトリウム(20mEq/L以上),⑤腎機能正常(血清クレアチニン1.2mg/dL以下),⑥副腎機能正常(血漿コルチゾール6μg/dL以上)を本例は満たしている。加えて血清浸透圧が低値にもかかわらず血清ADH濃度は3.3pg/mLを示し,抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone;ADH)の不適切な分泌過剰を示した。以上からSIADHを疑って水制限(1日1L以下)を実施したが,1週間経過しても低ナトリウム血症が続き,改善効果がみられなかったため,SIADHとした診断に対して再検討した。

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