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海外から持ち込まれる病原微生物による感染症拡大防止への備え 【標準予防策の徹底と感染経路別予防策を適用し,微生物検査結果を確認】

No.4851 (2017年04月15日発行) P.59

村上啓雄 (岐阜大学医学部附属病院生体支援センター長)

田辺正樹 (三重大学医学部附属病院 医療安全・感染管理部副部長)

登録日: 2017-04-12

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  • 最近,わが国では撲滅できたとされている麻疹が輸入例を端緒に拡大し,大きな問題となりました。また海外での診療歴がある帰国者が,わが国の医療機関を受診して,保有していた高度薬剤耐性菌が施設内で感染拡大した事例も散見されます。
    東京オリンピックも含め,今後ますます外国人の訪日が増える状況をふまえ,海外から持ち込まれる感染症対策のポイントについて,三重大学医学部附属病院・田辺正樹先生のご教示をお願いします。

    【質問者】

    村上啓雄 岐阜大学医学部附属病院生体支援センター長


    【回答】

    感染症には,人から人へ伝播していくという他の疾病にはない特徴があります。交通手段が発達し世界中を人が容易に行き来する現代社会においては,いつ海外から新たな感染症が日本に入ってきても不思議ではありません。このような海外からの帰国者への感染症対策は,①地域で流行している感染症,②新興・再興感染症,③薬剤耐性菌への対応に大別されます。

    (1)地域で流行している感染症への対応
    マラリア,黄熱病,下痢性疾患などが挙げられます。特別な治療を要する感染症もあるため,滞在先の流行状況に応じて鑑別疾患を挙げ,早期診断,治療を行うことが重要です。各地域における感染症の流行状況については,「厚生労働省検疫所FORTHのウェブサイト」1)が参考になります。蚊媒介の感染症などは,わが国で広がる恐れが低いものもありますが,疾病によっては診療時の曝露により医療従事者が罹患する場合や患者を通じて院内感染が生じる恐れもあるため,標準予防策の徹底とともに,必要に応じて感染経路別予防策を適用する必要があります。

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