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全国規模で国際基準の倫理教育を [お茶の水だより]

No.4843 (2017年02月18日発行) P.17

登録日: 2017-02-17

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▶全国の研究者の倫理教育を行うCITI Japanプロジェクトの事業が、文部科学省の5年間の支援終了に伴い、4月から一般財団法人公正研究推進協会(APRIN、理事長=浅島誠東京理科大副学長)に移管される。これまで医学系のみならず、理工系、人文系など多様な分野の638機関が登録、受講登録者数は46万7000人に上る。
▶ただ、残念な調査結果がある。昨秋、2017年度の利用継続の意向調査をしたところ、継続と回答したのは約250機関に留まった。継続中止の理由で最も多いのは、教材利用の有料化だ。17年度からは会費が1大学20万円となり、別途利用料金も発生する。また、独自の倫理教育を行うことを継続中止の理由に挙げる大学もある。
▶先月、都内でCITI Japanの事業継承式典が行われた。米国で広く使用されていたCITIプログラムを日本に導入した市川家國氏(APRIN専務理事)は、「国際誌の規定と国内の研究に関するガイドラインは、10年間以上の時差がある」と問題視。「国際誌の規定に準拠せず、論文が不掲載だったり撤回されるのは社会の損失」と訴え、APRINでは新たな教材として、生物統計の専門家の協力を得て、国際誌が研究者に求める再現性と客観性を確保するためのプログラムを開発することを報告した。
▶教材利用をやめることで倫理教育が手薄になってはならないし、個別の大学に独自の優れた教育システムがあるのであれば、それを全国で共有することはできないものだろうか。研究に公費が投入され、成果が世界に向けて発表される以上、日本人研究者の倫理教育は国家的な課題だ。APRINを中心に全国規模で取り組むことが、国際基準の倫理教育の普及に向けた最善の道と考える。

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