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原発性肺癌に対する胸腔鏡手術の現況【非小細胞肺癌治療としての位置づけ,安全性の課題,および今後の発展】

No.4835 (2016年12月24日発行) P.48

中島 淳 (東京大学呼吸器外科教授)

登録日: 2016-12-21

最終更新日: 2016-12-14

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Ⅰ期非小細胞肺癌の標準治療である肺葉切除および肺門・縦隔リンパ節郭清が胸腔鏡で行われる割合は増加し,2013年,わが国では69%に達した1)。低侵襲性に加え,開胸と比べ術後長期予後に有意差がないことが近年報告されている2)

胸腔鏡手術の実態は,完全鏡視下から小開胸・直視を併用する胸腔鏡補助下まで様々である。皮膚切開部位にも多くの変法があり,専門施設ごとに独自の発達を遂げている。

胸腔鏡の重大合併症は,肺動静脈などの大血管の損傷である。13年に158件の報告があり,術者の技量不足が主な原因とされた3)。技術認定を策定し,患者の安全を図るとともに,国全体の技術のレベルアップを図る必要がある。

ロボット支援肺癌手術は国内外の一部の施設で行われ,胸腔鏡手術よりも技術取得が容易とされるが,近年,さらに低侵襲化をめざした単孔式胸腔鏡手術が報告され4),中国の一部施設では多数行われている。局所麻酔,非挿管下に肺葉切除を行う報告もみられる5)。今後このような術式が標準化するかどうかは未知であるが,早期肺癌に対する,より低侵襲・安全な胸腔鏡手術法の開発は呼吸器外科専門医の使命のひとつであろう。

【文献】

1) Masuda M, et al:Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2015;63(12):670-701.

2) Murakawa T, et al:World J Surg. 2015;39(5): 1084-91.

3) 日内視鏡外会誌. 2014;19(5):569-82.

4) Gonzalez-Rivas D, et al:J Thorac Cardiovasc Surg. 2012;143(3):745-7.

5) Hung MH, et al:Eur J Cardiothorac Surg. 2014; 46(4):620-5.

【解説】

中島 淳 東京大学呼吸器外科教授

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