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先天性PAI-1欠損症の診断および治療,特に妊娠分娩管理 【疑い例は高感度測定法を推奨。妊娠中および分娩後の出血にはFFPやトラネキサム酸が有効】

No.4835 (2016年12月24日発行) P.52

武山雅博 (奈良県立医科大学小児科)

小林隆夫 (浜松医療センター院長(産婦人科))

登録日: 2016-12-21

最終更新日: 2016-12-13

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  • 先天性PAI-1欠損症の診断やその治療,特に妊娠分娩管理について,浜松医療センター・小林隆夫先生のご教示をお願いします。

    【質問者】

    武山雅博 奈良県立医科大学小児科


    【回答】

    プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(plasminogen activator inhibitor- 1:PAI-1)は,組織プラスミノーゲンアクチベーター(tissue plasminogen activator:tPA)を特異的かつ即時的に阻害することにより,線溶系反応の開始段階を制御します。PAI-1は分子量約4万2700の蛋白質であり,主に血管内皮細胞と肝細胞から合成分泌されます。

    血中のPAI-1は活性型,tPAとの複合体,活性のない潜在型などとして存在しますが,tPAとの複合体以外は非常に不安定であるため,臨床ではPAI-1・tPA複合体をトータルPAI-1として測定します。検体は,3.2%のクエン酸ナトリウム0.2mLに血液1.8mLの割合で採血し,転倒混和を5~6回繰り返した後,速やかに血漿分離し,必ず凍結保存します。血中トータルPAI-1は正常状態では40 ng/mL以下と低値ですが,敗血症等の急性炎症反応状態では著しい高値を示し,動脈硬化症や妊娠高血圧症候群などの慢性疾患状態でも増加します。ただし,検査感度はそれほど高くない上に下限値がいまだ不明のため,検出感度未満の場合は,浜松医科大学薬理学教室で開発された高感度測定法が推奨されます。PAI-1欠損症の疑いのある症例の場合は測定を依頼して頂きたいと思います。なお,最終的な確定診断は遺伝子解析です1)
    以下,私たちが経験した先天性PAI-1欠損症例を紹介します2)3)

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