株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

気道分泌亢進・喀痰喀出障害への対策 【喀痰増加への対策は,去痰療法から気道ムチンの選択的制御へと進化しつつある】

No.4834 (2016年12月17日発行) P.52

武山 廉 (東京女子医科大学内科学第一准教授)

登録日: 2016-12-13

最終更新日: 2016-12-08

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

気道粘液は,外界から侵入した病原微生物や粉塵に対する物理的バリアとして生体防御的役割を担っている。健常時,気道粘液は粘液線毛輸送により口腔内に排出され,自然に嚥下処理されている。しかし,呼吸器感染症や慢性気道炎症性疾患では,気道粘液産生が過剰になり気流閉塞が惹起される。このような過分泌病態では,咳受容体を介した咳嗽反射(湿性咳嗽)が喀痰喀出のために必要であり,鎮咳はかえって気流閉塞を助長することになる。治療には,喀痰喀出の誘導・促進,気道粘液産生の抑制を考えるべきである。現在,喀痰喀出の誘導には去痰薬や喀痰調整薬が,気道分泌の調整には14員環マクロライド系抗菌薬や抗コリン性吸入薬が用いられている。

近年,喀痰の主要成分である気道ムチンMUC 5AC,MUC5Bの遺伝子発現メカニズムや気道における役割が明らかにされてきた。MUC5ACとMUC5Bの欠損マウスでは,MUC5Bは生体防御的因子として機能するのに対し1),MUC5ACは気道過分泌疾患の病態形成に関与していることが示された2)。MUC5ACの発現は上皮成長因子受容体やIL-13受容体を介しており,両経路の阻害は気道分泌亢進に対する治療戦略として有望である。従来,気道分泌の抑制による気道防御機能の障害が危惧されてきた。今後はムチン産生を選択的に制御することで,防御機能の保持と気道過分泌の抑制を両立できる分子標的薬の開発が期待される。

【文献】

1) Roy MG, et al:Nature. 2014;505(7483):412-6.

2) Bonser LR, et al:J Clin Invest. 2016;126(6): 2367-71.

【解説】

武山 廉 東京女子医科大学内科学第一准教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top