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(2)三叉神経ブロック [特集:解説! 三叉神経痛]

No.4833 (2016年12月10日発行) P.34

安部洋一郎 (NTT東日本関東病院ペインクリニック科部長)

登録日: 2016-12-09

最終更新日: 2021-01-06

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  • 神経ブロックは,薬剤でコントロール不可の三叉神経痛に対して用いられる。末梢枝ブロックから施行し,効果が低ければより中枢側での神経ブロックとなる。バルーンカテーテルによるガッセル神経節の圧迫やグリセオール®によるブロックもあるが,高周波熱凝固法がより低侵襲で選択的な神経ブロックである

    ガッセル神経節ブロック以外は外来で施行できる。ガッセル神経節ブロックは鎮静を行うため,基本的に1泊する必要があるが,局所麻酔下で行えるため,高齢者や全身状態が悪く全身麻酔のリスクが高い患者にも施行できる

    副作用には知覚低下,麻痺,しびれなどがあるため十分なインフォームドコンセントを行い,手術療法やガンマナイフなども選択肢の1つであることを説明する

    1. 現在の神経ブロック治療の位置づけ

    三叉神経痛で,薬物療法が奏効しない症例や,薬剤の副作用がある症例には,神経ブロックが適応となる。当科では,ある程度の経験を積んだペインクリニシャンであれば,末梢枝ブロックからガッセル神経節ブロックまで安全,確実に施行できるブロックのスタイルを追求している。年間症例数は,ガッセル神経節ブロックが150症例前後,他の末梢枝ブロックが330症例前後である。

    1 三叉神経ブロック治療とは

    三叉神経痛に対する神経ブロック治療は,局所麻酔薬で神経ブロックを施行した後,長期間の症状緩和を目的とした無水アルコール,フェノールグリセリンなどの神経破壊薬を用いる方法と高周波熱凝固法(radiofrequency thermocoagulation:RF),もしくはその両方を用いる方法が主流である1)
    バルーンカテーテルでガッセル神経節を圧迫する神経ブロックもあるが,当科では行っていない。神経節をバルーンで盲目的に圧迫,挫滅させるという手技と全身麻酔下という条件では,低侵襲・選択的治療へと医療全体が進んでいる現在,施行施設は限られよう。
    当科では1970〜90年代まで99.5%アルコールを用いたアルコールブロックを行っていた。有効期間が10年以上と長い反面,知覚低下や完全知覚消失が継続したり,知覚低下で角膜障害が起こることがあった。また,非常に稀ながらゴーストペインと呼ばれる求心路遮断性疼痛が持続する副作用もあり,現在はRFが有効性,安全性の点から主流である。
    RFは,先端4mmの非絶縁部を有するテフロンコーティング針(ガイディングニードル)の中に高周波を発する内筒(スライター針)を挿入し,高周波による発熱で神経ブロックを行う(図1)。設定温度にもよるが,針先端の非絶縁部に長径4mm,短径2mmほどのラグビーボール状の凝固領域を生じる。アルコールなどの薬液による永久ブロックの場合,想定外の箇所まで薬液が広がる恐れがあったが,熱凝固では凝固領域は針の非絶縁部周囲に限られるため,より安全性が高い。また,針位置を目的神経に接触させることで,三叉神経全体の神経ブロックにはならず,選択性が高い。副作用は知覚低下のほか,多くの症例でしびれ感の訴えがある。典型的三叉神経痛の患者は,強い痛みから解放されるため,ほとんどの場合は治療満足度が高いが,実際は知覚低下やしびれを気にしている患者も多い。十分なインフォームドコンセントを行い,しびれが気になる症例では温度を通常の90℃から55~70℃程度に低下させ,治療することもある。

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