株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

食後トリグリセリド値の診断基準は存在するか?

No.4832 (2016年12月03日発行) P.61

三井田 孝 (順天堂大学大学院医学研究科臨床病態検査医学教授)

登録日: 2016-11-30

最終更新日: 2016-11-29

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 健康診断や人間ドックでは,トリグリセリド(TG)は原則として空腹時に採血した検体で測定されています。食後のTG値のほうが,空腹時より心血管系のイベント予測能が高いとの報告もあるようです。食後TG値の診断基準はあるのでしょうか。

    (質問者:千葉県 K)


    【回答】

    TGは,血中では2層構造を示すリポ蛋白の芯の部分に存在します。リポ蛋白のTGの割合は,リポ蛋白の直径が大きくなるほど高く,カイロミクロンで最大(重量比で約85%)です。カイロミクロンは,食事中の脂質が小腸で吸収され,これらを材料として小腸上皮細胞で合成されます。リンパ液へ放出されたカイロミクロンは,最終的に胸管を通って,左静脈角から静脈へ流入します。血管内皮に結合しているリポ蛋白リパーゼは,カイロミクロンや超低比重リポ蛋白(VLDL)のTGを分解します。こうして生じたカイロミクロンレムナントは,アポリポ蛋白Eを認識するリポ蛋白受容体に結合し,主に肝臓へ取り込まれます。

    分離したカイロミクロンを静脈内へ投与すると,その血中半減期は数分から15分程度しかありません。しかし,実際の血中カイロミクロン濃度は,小腸での脂肪吸収速度,小腸上皮細胞でのカイロミクロン合成速度,血中での異化速度などが複雑に絡み合って決まります。脂肪負荷試験では,血中カイロミクロン濃度は,脂肪投与後の数時間は上昇します。糖尿病や冠動脈疾患患者では,健常人よりTG値のピーク出現が遅く,持続時間も長いとされています。その程度は,カイロミクロン代謝の遅延を反映します。健常人が通常の食事を摂取した場合,食後12時間以上経ってもカイロミクロンが残ることはありません。

    残り1,284文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top